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江戸川区で生まれ、この地に合った野菜「小松菜」を育てる真利子農園さんに、小松菜について色々聞いてみた!

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東京都江戸川区生まれの野菜を、知っていますか?

スーパーで見かけないことはなくらい私たちにとって身近な「小松菜」を、江戸川区にある農園で育てているご夫婦がいらっしゃいます。

東京23区に農園!?
意外な感じもしますが、小松菜のふるさとである江戸川区には、区のホームページによると約280戸の農家さんがいらっしゃるそうです。

小松菜については、ヤサイラボのコラム「東京生まれの都会派野菜、小松菜」もあわせてご覧ください!

都市型農園経営を実践され、徹底的な地産地消を実現している環境に優しい「真利子農園」さんに、小松菜農家としての苦労や、都心で農業を行うメリットなどについてお話を伺いました。

真利子農園/真利子忠篤さん

真利子農園/真利子忠篤さん
読売江東理工專門学校(現 読売自動車大学校)卒業後、アンフィニ関東に入社(現 関東マツダ)し、27才で退職。その後就農。二級整備士の資格を保有。

「小松菜」は江戸川区で生まれ、江戸川の土地に合った野菜

真利子:
学校を卒業した後、会社員として働いていたのですが、27歳の時に農家になる決断をしました。一から始めたという訳ではなく、親の代からずっと農家をやっていましたので、家業を継ぐという形での就農です。

小松菜生産についても、私の代から始めたわけではなく引き継ぐ形で栽培しています。よく知られているように、小松菜は、江戸幕府八代将軍の吉宗公が鷹狩でこの地を訪れた時に召し上がった縁で、地名の小松川村から取って名付けたと言われています。今から約300年も昔から作られていたわけですから、小松菜はこの土地に合った野菜なんでしょうね。近くに、吉宗公が小松菜を召し上がった場所である香取神社と小松菜屋敷が遺っていますので立ち寄ってみてください。

江戸川区の真利子農園の小松菜

真利子:
先ほどの話にもありましたが、小松菜が江戸川区の土地に合っているということがあると思います。あとは、この辺りは昭和20~30年頃まで水田が多かったそうです。ただ、都市化の進行で用水路の水が排水などでだんだん汚れてきて、稲作用に使うのが難しくなってきたようです。そこで、多くの農家さんが水田をやめて畑にしたという経緯があると聞いています。

江戸川の農家は、土地が狭かったということもあったと思うのですが、露地ではなくハウス栽培にすることによって収益が上げやすくなったと聞いています。今は、1つの畑で年に4、5回収穫しているのですが、昔は小松菜がもっとコンパクトな状態で収穫していたので、すごくサイクルが早かったんです。年に7、8回は収穫していたので、非常に収益性もありました。

また、ハウスを立てたことによって、宅地化の波に飲まれなかったことも影響しています。ハウスを壊して借金してまでアパートなどを立てるよりは、農家のままでも十分な収益があったということだと思います。

小松菜農家として最も大切にしたいのは、「味」

真利子:
まず、味が一番ですね。美味しいものを作って提供することを第一に考えて作っています。次に、見た目ですね。やっぱりいくら美味しいものを作っても、見た目が良くないとダメです。極端な話、無農薬で作ったとしても、虫が食べて穴だらけになっていると消費者の方の手に取っていただけないので。

真利子:
栽培していて感じるのは、やはり品種による違いが大きいということです。今は、甘みのある品種(※)を使用しています。

(※)7月に公開したヤサイビト トキタ種苗さんの品種でした!

江戸川区の真利子農園

もちろん、肥料や水が足りないとどうしてもえぐみや苦みが出てきますが、栽培条件はなるべく一定になるようにコントロールできます。あと、夏場はえぐみが出やすいですね。小松菜の旬は、本来冬から春にかけてですからね。でも、夏の暑さにも強い品種があって、それはえぐみが少ないですね。以前、納品していた学校給食用には特に気を使っていましたよ。ちょっとでも苦みがあると、子供が食べてくれないので。

横の繋がりが強い、江戸川区は皆で農業を発展させていく!

真利子:
江戸川区は結構農業が盛んなのですが、横の繋がりがすごく強いんですよ。やってみて効果があったことは、全て共有しているんです。江戸川区の農家の組合で農業経営者クラブというのがあって、皆で発展しようという感じでやっているので、良かったことはすぐに情報が伝わって、皆が取り入れています。ですから、特別うちの農園だけでやっていることは無いかもしれませんね。

真利子:
23区内だからといって、特別な制限があるわけでは無いですね。ただ、民家が隣接してるケースが多いので、農薬を散布する際は飛散しないようにとか、肥料も匂いが少ないものにするとか気を使いますね。 特に、これからの時期は窓を開けて網戸にして、風を取り入れる家庭もありますしね。風が強いと土埃が飛ぶので、ハウスを閉めるなど気を付けています。このあたりはハウス栽培が主なのでいいですが、露地栽培が多いエリアで近くにマンションが立つと、マンションの住人から洗濯物に匂いが移ったり、汚れたりといった苦情が来るという話を聞きますね。

真利子:
ここ最近は、夏の暑さですね。毎年、今年は「記録的な猛暑」と言われて、実際年々気温が上がっています。小松菜は本来夏の野菜ではないので、猛暑になると葉が焼ける被害が出ることがあります。対策として、東京都の農業普及指導員の方が資材などの提案をしてくれて、今年は遮光シートをハウスに入れてテストしている所です。猛暑対策のためにそういった資材を取り入れると、費用もかかります。

あとは、ハウス内の作業が本当にしんどいです。夏場の作業は、空調付きの作業着を着ていないと、とても暑くて作業できません。加えて、暑いと虫も増えますし、毎年夏の暑さには泣かされます。

江戸川区の小松菜

真利子:
やはり食べ物を作っているので、美味しいと言われるのが、何よりも1番嬉しいですね。先ほどお話ししたように、そこに一番こだわっていますしね。なかなか消費者の方と直接触れ合うことはないのですが、直売所で買われた方が、次に会った時に「美味しかったよ」と言ってくれる声と、家族が美味しいと言ってくれる声、それが1番嬉しいですね。

以前は小学校にも納品していて、子どもから美味しいという声をいただくこともありましたが、納品時間が7時半から8時の30分の間に全ての学校に納めないといけないという制約があって、時間的に厳しくなったのでやめてしまいました。代わりに、今はホテルのレストランに仲卸を通して納めています。これは、東京都農林水産振興財団が運営しているチャレンジ農業支援センターの支援制度を活用しています。この制度の中に販路開拓支援というのがありまして、ホテルからご指名をいただくことができました。美味しさが評価されて採用されたので、嬉しかったですね。

先日、小松菜を納品しているホテルのレストランに家族で食事に行ったのですが、シェフともいろいろお話できて良かったですね。あと、先ほど言い忘れましたが、美味しい小松菜を食べていただくために、収穫するときのサイズにはこだわっています。大体27㎝前後で収穫すると、甘味があって茎が柔らかくて食べやすくて美味しいんです。ただ、聞いた話だと、九州地方では結構大きいサイズで収穫したものが好まれて出回っているようなので、地域による大きさや味の好みがあるのかもしれません。 

小松菜農家に聞く!保管方法や美味しい食べ方

真利子:
最近スーパーなどでは、鮮度を保つための袋に入っていることが多いのでわかりにくいかもしれませんが、時間が経つと葉の張りが無くなり、クタっとなっていきます。それは鮮度が落ちているということになります。あと、葉が黄色くなっているのは収穫してから相当時間が経ってしまっているので、避ける方が良いですね。

購入した後は、基本的には冷蔵庫で立てて保存してください。あとは、保存中にクタっとしなびてしまったら、水につけてください。そうすると、またシャキッとして美味しく食べられるようになります。他の野菜でも、水につけるとシャキシャキしますよという裏技があると思うんですけど、小松菜も一緒ですね。

真利子:定番で言うと、お浸しやお味噌汁がおすすめです。それと、ポタージュスープも美味しいですし、それを使ったスープパスタというのも小松菜の新しい食べ方ですね。もし、根っこがついた状態の小松菜を入手出来たら、根っこは捨てずに食べてください。側根をとって、天ぷらにすると美味しいですよ。

最近、江戸川区内のラーメン屋が地元で採れた小松菜を使った「小松菜ラーメン」というのを提供しています。江戸川区内の方々が、地元の特産品ということで力を入れてくれて、いろんなお店と繋いでいただいたりしています。有難いことに、歴代の区長さんや区議会議員さんも農業に対して理解があって色々応援してくださいますし、バックアップしていただけているので、我々農家としては本当に心強い限りですね。

真利子農園の真利子さん

真利子:
人それぞれですね。私自身は、子どもが継いでくれるかどうかはわからないですが、農地の受け皿だけは残しておこうと思っています。江戸川区は、農業の振興に対して本当にいろいろサポートをしてくれるので、他のエリアよりは農業を引き継ぐ環境は整っているんじゃないかと思っています。

「家業だから継がないといけない」という押し付けはしたくないので、子どもの判断に任せようと思っていますし、他の農家の方もそういう感覚だと思います。私がこうやって一生懸命作業している姿を見せていれば、いつか農業を継ぎたいと言うかもしれないと淡い気持ちを抱いています(笑)。

真利子:
昔と違って、小松菜自体が全国的にすごく有名になってしまったので、産地的にも差別化が難しいんですが、やはり発祥の地として江戸川ブランドで差別化をしたいですね。江戸川区内のいろんなレストランなどで、もっと使ってもらえるといいですね。やっぱり、鮮度がいい方が絶対美味しいと思いますから。区民の方に食べていただいて、口コミサイトなどで高評価してもらえたら、区民以外の人も多く訪れるようになるので、地域おこしにも繋がると思っています。

同じように、東京都内で農業を頑張っている青梅市の繁昌農園の繁昌知洋さんのインタビューはこちら!

https://vegetablescience.org/professional/2229


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