ブロッコリーの成分が認知機能を守る?~3年半の研究で分かった「グルコラファニン」の可能性~ :無作為化二重盲検プラセボ対照パイロット研究
みなさんは、年齢を重ねるにつれて「人の名前がパッと出てこない」「最近うっかりが増えたかも…」と感じることはありませんか?
人生100年時代と言われるなかで、脳の健康(認知機能)をいかに長く保つかは、多くの方にとって関心の高いテーマです。
最新の研究では、ブロッコリーに含まれる成分を長期間摂取することで、認知機能の低下を抑えてくれる可能性が明らかになりました。
こちらの記事では、弘前大学やカゴメ株式会社などの研究チームが発表した、3年半におよぶ臨床試験の結果をご紹介します。

試験方法
研究では、客観的で信頼性の高い結果を得るために「二重盲検法(※1)」という厳密な方法で検証が行われました。
- 対象: 物忘れの自覚症状があり、事前検査で認知障害があると判断された63〜90歳の高齢者26名
- 期間: 42ヶ月間(3年半)
- 方法: 参加者を2つのグループに分け、サプリメントを毎日摂取してもらいました。
- グルコラファニン群: ブロッコリーの注目成分「グルコラファニン」を1日30mg含むサプリメントを摂取
- プラセボ群: 有効成分を含まない偽薬(プラセボ)を摂取
(※1)二重盲検法(にじゅうもうけんほう)
参加者本人も、観察する医師や研究者も「どちらが本物の成分か分からない」状態で行う試験方法です。「思い込み」による影響を完全に排除できるため、極めて信頼性の高い研究手法とされています。
評価には「MCIS」という認知機能テストを使用し、記憶パフォーマンス指標(MPIスコア)の変化を調べました。具体的なテスト内容は以下のとおりです。
評価項目 | 内容 | |
|---|---|---|
| 1 | 10単語リストを用いた即時想起試行 | 提示された10個の単語をすぐに思い出す課題 (注意・作業記憶・理解力を評価) |
| 2 | 短期記憶の判断 | 1の試験の単語について、「自分は後で何単語覚えているか」を予測する課題 (自分の記憶能力への自覚・洞察力を評価) |
| 3 | 動物の三者比較 | ランダムに提示される3匹の動物のセットの中から、仲間外れの1匹を選択(作業記憶・判断力・意味記憶を評価) |
| 4 | 10単語の遅延自由再生 | 少し時間を置いてから、最初に覚えた10個の単語を自力で思い出す課題 (短期記憶力を評価) |
| 5 | 10単語の遅延ヒント再認 | 先に見た単語リストにあったものかどうかを別する課題 (記憶の保持・再認力を評価) |
| 6 | 動物比較課題の遅延自由再生 | 先に実施した動物比較の課題で使われた項目を思い出す課題 (関連づけ記憶力を評価) |
実験結果
超長期にわたる追跡調査の結果、とても興味深い事実が明らかになりました。
1. 記憶パフォーマンス(MPIスコア)の改善と維持
42ヶ月の全期間を通じた解析において、グルコラファニンを摂取したグループは、プラセボ群と比較して記憶パフォーマンスのスコアが有意に向上し、その後も高く維持されていました。
特に、軽度認知障害(MCI)(※2)の傾向が見られていた参加者において、この効果が顕著にあらわれました。
また、効果はサプリメントを継続して30ヶ月、42ヶ月と後半に入るにつれてグループ間の差が明確になり、グルコラファニン群で記憶パフォーマンスの顕著な改善・維持効果が確認されました。

(※2)軽度認知障害(MCI)
健常な状態と認知症の中間に位置する段階のことです。日常の基本動作は一人でできますが、物忘れなどの記憶障害が同年代よりも少し目立つ状態を指します。

2. 「即時」と「時間をおいた」記憶テストで好成績
テスト課題を詳しく分析したところ、以下の特定の記憶テストでグルコラファニン群がプラセボ群に比べて著しく優れた成績を示しました。
- 1番:10単語の即時再生(統計的に極めて明確な差)
- 4番:10単語の遅延自由再生(明確な有意差)
言葉を提示されてすぐに思い出す「即時再生」だけでなく、少し時間を置いてから自力で思い出す「遅延自由再生」の能力においても、グルコラファニンを摂っていたグループの方が優れた結果を示しました。
なぜブロッコリーの成分が脳の健康を守るのか?
今回の結果から、グルコラファニンが長期的な認知機能低下の予防に貢献することが明らかになりました。

では、なぜブロッコリーに含まれる成分が脳の健康を守ってくれるのでしょうか?その理由を3つのステップでお伝えします。
①体内で「スルフォラファン」に変化
グルコラファニンは、体内に取り込まれると腸内細菌などの働きによって「スルフォラファン」という活性成分に変換されます。
②抗酸化・解毒のスイッチ(Nrf2)をオン
アルツハイマー病の脳では、不要なタンパク質が蓄積することで細胞がダメージを受け、抗酸化スイッチの役割を持つ「Nrf2」というタンパク質が減ってしまいます。その結果、脳の防衛反応が弱まる悪循環に陥りがちです。
スルフォラファンはこのスイッチ(Nrf2)をオンにして、体が本来持っている抗酸化酵素や解毒酵素の働きを高めてくれます。
③脳細胞やミトコンドリアを保護
加齢やストレスによって脳内のエネルギー工場である「ミトコンドリア」の機能が落ちると、過剰な活性酸素が発生して脳細胞にダメージを与えます。グルコラファニン由来のスルフォラファンは、このダメージを和らげて脳の機能をサポートしてくれると考えられています。
さらに、グルコラファニンの摂取は脂肪肝や糖尿病などの改善にも役立つことが知られています。これらは認知症のリスク要因でもあるため、全身の健康が底上げされたことも脳の健康維持に良い影響を与えたと推測されます。
今日の食卓から始められる!ブロッコリーの賢い摂り方

「脳の健康を守るために、野菜のパワーを取り入れたい!」と思った方に、日常で実践できるおすすめのポイントをご紹介します。
◯味付けや調理法を変えてみる
ブロッコリーをおいしく食べる方法は、茹でるだけではありません。油でいためたり、シチューに入れて煮込んだりするのもおすすめです。
当研究会でもブロッコリーを使ったレシピをたくさん掲載しているので、ぜひ参考にしてみてください。
・ブロッコリーとシラスのバター炒め
・ブロッコリーたっぷりシチュー
◯ブロッコリースプラウトを活用する
発芽直後のブロッコリースプラウトには、成長したブロッコリーよりも高密度のグルコラファニンが含まれています。
サラダや和え物にサッとプラスするだけで、手軽に栄養を補給できます。

無理に一気に摂るのではなく、日々の食事のなかで「美味しく、楽しく続けられる工夫」をすることが一番の近道です。
ぜひ、今夜のメニューにブロッコリーを取り入れてみてくださいね!
【出典】
本記事は、弘前大学およびカゴメ株式会社等の研究チームによる論文発表をもとに作成しています。