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─健康日本21(第二次)の目標値との比較─

諸外国の食事ガイドラインにおける 野菜類の分類と 1 日あたりの推奨摂取目標量 ─健康日本21(第二次)の目標値との比較─

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「スイカ」や「いちご」は、果物? それとも野菜? と、考えたことはありませんか?

野菜の定義については、野菜科学研究会の過去のコラムでも紹介しました。

野菜の定義は、植物としての特性、園芸(生産関係)上の特性、または栄養や流通・消費上の特性に応じた分類があり、統一されたものはありません。

こちらの記事で紹介する論文は、国民健康づくり運動「健康日本21」が推奨する野菜類の摂取目標量350gに対し、過去10年以上にわたって摂取量が不足している日本の現状について検討したものです。

この論文では、日本の目標設定や野菜の分類が諸外国と比べて厳しい可能性に注目し、諸外国の状況を整理して目標量を比較しています。

本調査の結果によると、食文化の違いによって推奨摂取目標量と相互に比較することは難しいものの、各国が野菜の分類においてジュース、漬物、果物、豆類、イモ類、きのこ類、海藻を含めるかどうかについては、生物学的側面よりも調理的側面を重視して分類している可能性があることがわかりました。

国民健康づくり運動「健康日本21」における野菜類の推奨摂取目標量350gは、健康増進を目的に設定しています。しかし、この目標は、自国の食事特性や疾病構造を考慮し、健康リスクへの配慮を踏まえて設定する必要がありそうです。

調査では、Food-based dietary guideline(FBDG)を対象とし、1 日あたりの野菜類の推奨摂取目標量、ならびに野菜類の分類を健康日本21(第二次)における野菜類の目標項目と比較を行いました。

次に、諸外国(30ヵ国)のFBDGから野菜類の推奨摂取目標量を抽出し、その策定根拠の有無を確認。また、野菜ジュース、じゃがいも、じゃがいも以外のいも、豆類などの、野菜類の分類に一貫性が見られ ていない食品や、漬け物、きのこ類、藻類などの地域によって摂取習慣が異なる可能性が高い食品を対象項目とし、それらの分類を整理していきます。 

調査の結果、日本と同様に野菜類を独立した食品群として推奨している国は19ヵ国あり、推奨摂取目標量の範囲は160~900gの範囲で設定されていました。

一方で、9ヵ国では野菜類と果物類を、2ヵ国では野菜類と豆類を合わせて推奨摂取目標量が設定されており、その範囲は300~1,100gと幅広いことが確認されました。

さらに、日本を含めた19ヵ国のFBDGでは、野菜類の推奨摂取目標量の策定根拠が説明されています。

じゃがいもと豆類が野菜類に含まれるか否かについては、ほぼすべての FBDGで明記されており、7割以上のFBDGで野菜類に分類されていません。

野菜ジュースに関しては、12ヵ国で分類が不明とされていますが、日本を含む16ヵ国では野菜類に含まれています。

きのこ類については、分類が明記されていない11ヵ国を除き、日本以外のすべての国で野菜類に含まれています。

本調査から、国や地域によって食文化は異なるため、日本の野菜類の推奨摂取目標量との相互比較は困難で難しいことが示唆されました。

引用文献:「諸外国の食事ガイドラインにおける 野菜類の分類と 1 日あたりの推奨摂取目標量 ─健康日本21(第二次)の目標値との比較─(苑 暁藝ら)」 『栄養学雑誌』Vol.82 No.1 44-57(2024)

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