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ディープラーニングで野菜の鮮度を高精度に判定

ディープラーニングで野菜の鮮度を高精度に判定

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スーパーで野菜を選ぶ際、鮮度をどのように見極めていますか?

色やツヤといった「見た目」や、ハリのような「触感」などで判断する方が多いのではないでしょうか。しかし、野菜ごとに鮮度を判断するポイントは異なり、パッと見ただけでは判断が難しいこともあります。

そこで、消費者に鮮度の良い野菜や果物を届けるためには、短時間で正確かつ大量の食品を傷つけずに鮮度を判定する技術が求められています。

これまでの研究では、野菜の鮮度の検査方法として、静止画から鮮度を判断する機械学習の手法がとられてきました。しかし、この方法では、保存環境や時間経過による鮮度の変化を的確に推測することが難しいのです。

こちらの記事で紹介する論文では、画像認識技術と「ディープラーニング」を組み合わせ、野菜の鮮度を高精度に判定する新しい方法が研究されています。

ディープラーニングは、人間の脳の働きを模倣した人工ニューラルネットワークを用いる技術です。大量のデータから自動的にパターンや特徴を学習することで、従来の機械学習よりも複雑なデータを処理し、多角的な判断をすることができます。しかし、この技術を鮮度判定に活用するためには、鮮度の良し悪しがわかっている大量の正確なデータセットが必要なのです。

こちらの研究では、複数のディープラーニングモデルを用いることで、野菜の鮮度を最適に分析した結果を得ることができました。今回の研究で用いられたディープラーニングモデルによる鮮度評価の流れは、以下のようになっています。

1.データセットの構築
過去の研究の鮮度基準にもとづき、このデータセットには、トマト、きゅうり、にんじん、じゃがいも、ピーマンを使用しました。
新鮮なものから腐っているものまで、さまざまな鮮度状態の野菜を、鮮度の良し悪しで2つに分類することで鮮度を定義しています。

2.画像からの特徴抽出と学習
ディープラーニングモデルに、鮮度を評価したい野菜の画像を読み込みます。色の変化や表面のしわなど、鮮度に関連する特徴を多角的に抽出し、データセットを元に鮮度を判断します。

より高精度な鮮度評価をするため、ディープラーニングには3つのモデルを採用しています。

さらに複数のモデルを単体または組み合わせて使用し、それぞれの精度と処理速度を評価しました。

実用化を考慮すると、処理速度も重要です。そのため、この研究では短時間で処理できるモデルの構築も同時に行いました。

研究結果より、3つのディープラーニングを組み合わせたモデルの精度は96.98%で、最も高精度に野菜の鮮度を評価できることがわかりました。同時に素早い処理能力も実現しています。

一方で、精度の高さは野菜によっても異なります。ピーマンやじゃがいもなど、一部の野菜では、腐った状態を判断するのが難しいというような課題も残りました。

このようなディープラーニングを活用した技術が普及することにより、カメラで撮影した野菜を自動的に鮮度ごとに仕分け、適切な処理を施して出荷することが可能になるかもしれません。
その反面、鮮度に過敏になりすぎることで、まだ食べられる野菜を購入してもらえなくなるなど、フードロスに繋がる可能性も考えられます。

私たち消費者が保存テクニックを活用したり、調理予定に応じて鮮度を選んだりすることで野菜を有効活用できると、野菜にも環境にもやさしい世界になりそうですね。

Yuan, Yue & Chen, Xianlong. (2023). Vegetable and fruit freshness detection based on deep features and principal component analysis. Current Research in Food Science. 8. 100656. 10.1016/j.crfs.2023.100656. 

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