野菜部 インタビュー

東京都立園芸高等学校野菜部に聞いてみた! 日本の今の農業事情とこれからの課題

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日本の農業従事者数の減少傾向が続く中で、この先、国産の農産物を安定して食べられる社会を実現するためには、若い人に農業に関心を持ってもらうことが必要です。

そこで、野菜科学研究会では、農業に関心がある若者たちが今どんなことを考えて、何を学んでいるのかを知るため、東京都立園芸高等学校の「野菜部」を取材しました。

東京都立園芸高等学校 野菜部の皆さんは、どんなことを考えているのか?
5名の部員の方に、お話を伺いました。

東京都立園芸高等学校を目指したきっかけは?

坪内)私は、座学があまり好きではなくて(笑)。勉強が嫌いというわけじゃないんですが、高校3年間、毎日6時間座って授業を受け続けるのはしんどいなと思ったんです。同級生のお兄さんが通っていたので、東京都立園芸高等学校のことは知っていました。実際に見学に来てみると、敷地が広くて自然もいっぱいで、ここなら3年間高校生活を楽しく送れるなと思って進路を決めました。

谷口)私は、親戚が都内で農家をしていることもあり、小さい頃から畑作業をしたり、土で遊んだりと、自然と触れ合うのが好きでした。進路に悩んでいる中学3年生の時に、「そういえば自然が大好きだった」という話を先生にしたら、自然について学べる学校を調べてくれました。いくつかの学校を見学するうちに、園芸高校のイチョウ並木、充実した施設、広大な空間に惹かれて決めました。

徳澤)世田谷区内の広い敷地で、自分で野菜を育てられる。さらに、育てた野菜を、自分で消費者に売って届けられるという点に惹かれて入学しました。

春日)僕は小さい頃から植物が好きで、プランターで栽培をしたり、中学校でも「園芸部」という部活に入って花や野菜を育てていました。進路を考えた時、世田谷区内にありながら圃場や設備が充実しているという点で、園芸高校でぜひ学びたいと思って志望しました。

鈴木)初めは、普通科の高校に行く予定でした。でも、調べていくうちに、自然環境が豊かな園芸高校もいいなと思うようになっていって…。私は、栄養士を目指しているのですが、食と農業は密接に関わっているので、興味を持ったというのもありますね。

園芸高校で学び、将来はどのような仕事に就きたい?

坪内)農家をやりたいです! 野菜をつくるかどうかは決めていませんが、農家という道に進む予定でいます。そのために、もっと深く農業を学びたいので、卒業後は農学系の大学に進学する予定で勉強を頑張っています!

谷口)私は、明確な将来の夢というものはまだないのですが、卒業後は自然系の専門学校に進学する予定です。そこで色々経験して、自分に合う仕事を見つけたいと思ってます。

徳澤)私もまだ決まってないのですが、今は造園関係の仕事をやりたいなと思ってます。造園技能士の検定を受けたのですが、すごく勉強のやりがいがありました。造園の授業も楽しいです。

春日)今はまだ2年生なので、はっきりと決まってはいないのですが、野菜農家は候補の一つです。最近気になってるのは、農業高校の教員です。卒業後は、農学系の大学に進学しようと考えています。

鈴木)先ほど話したように、私は栄養士を目指しています。調理の作業より、栄養について考える方が好きなので、栄養士として食材の栄養計算やバランスを考える仕事をやりたいです。でも、最近では、坪内先輩のように農家もいいなと少し思ってます。食品と農業は関わりが深いので、何かしら農業に関連している仕事に就きたいですね。

園芸高等学校が考える「今の日本の農業が抱える課題」とは?

坪内)若い世代がいないことです、本当に。今年の8月に、農家さんのインターンシップに参加したのですが、その地域に若い野菜農家さんは一人だけしかおらず、本当にびっくりしました。

谷口)農業への関心不足ですね。農業について知らない人が多いという問題があると思います。私の地元では毎年、小学校、中学校で農業体験をやっていたのですが、 コロナ禍でその体験がなくなってしまいました。若い世代が農業に触れ合う機会や、自分で野菜をつくって食べるという機会が減ってしまったというのが問題かなと思っています。

徳澤)これからは、日本でもスマート農業が主体になっていくと思っています。しかし、ご高齢の方だと、ITや機械を扱うのが難しいということが課題なのかなと思います。

春日)先輩方も言ってる通り、一番は高齢化が深刻だと思っています。地方に行くと、90代のおじいちゃん、おばあちゃんが杖をつきながら作業されてるという話も聞きます。それと、農業への理解不足ですね。よく「野菜が高すぎる」と話題になりますが、認識が間違っているのではと感じます。農家さんが儲けようと値上げをしている訳ではなく、資材やエネルギー価格が上がってるから野菜の価格も上がっているのに、誤解が生まれてしまっているのではと感じています。

鈴木)私も、農業従事者の高齢化が一番の問題だと思います。小さい頃に祖父の畑に行ったとき、周りで農作業している人は80代、90代くらいの方ばかりでした。若い人は全然見かけなかったのを覚えています。

皆さんが友達や家族に農業の魅力を伝えるなら、どんなことを話しますか?

坪内)農業って、儲からないというイメージがある方もいると思います。でも、決して稼げない仕事ではないと思います。自分が食べるものも生産しているわけですし、食いっぱぐれることはないじゃないですか。私は、農業はすごく楽しいと思っています。土に触れるとか、自然の中にいることが楽しくて。「農業の魅力は? 」と聞かれたら、私は「楽しい」の一言で完結しちゃいますね。

谷口)私も坪内さんと同じで、自分でつくったものを自分で食べたり、他の人に食べてもらったりできることが魅力だと思います。農業を通して、育てる楽しさや人と関わる楽しさを知ることができています。農業だからこそ見えてくるものとか、楽しさがあるのが魅力なのかなと思っています。

徳澤)自分が1から育てたものを、他の人に食べてもらうという点が魅力だと思います。食べてもらい、「美味しい」と言ってもらえた時は最高に嬉しいです! 努力が報われたと感じますね。

春日)僕は中学校で園芸部に入っていたのですが、今でも定期的に顔を出して、園芸高校で学んだことを教えています。あと、友達と遊ぶときに、野菜部でつくった野菜をあげることもよくあります。トマトとかは、その場で食べて「おいしいね」と言ってもらえることもあって。話だけじゃなく、写真や現物を見せることで農業の素晴らしさを伝えられていると思います。

鈴木)収穫した野菜をあげると、喜ばれますね。「美味しい」と言われると、今までの苦労が嘘のようにはじけ飛んで快感です! あとは、野菜にまつわるクイズを出すこともあります。

最近、気になった農業に関するニュースは?

坪内)地球温暖化の影響で、山に食べ物がなくなり、クマが里に下りてきて畑を食い荒らすという話が気になりました。

谷口)「アクアポニックス」という魚の飼育をしながら、その水を循環させて野菜を育てるという仕組みを知り、すごく気になりました。

徳澤)作業中にトラクターに人が巻き込まれたニュースを見て、日頃から安全確認しないとなと改めて感じました。

春日)ここ1、2ヶ月の間でも多かったのですが、風水害や暑さなどの異常気象のニュースですね。今年の1月に地震があった能登半島では、大雨の被害を受けて畑が水浸しになり、作物が全滅したようで大変だと思いました。

鈴木)私が強く印象に残ってるニュースは、お米の価格のことです。お米は主食として食べるだけでなく、餅やおせんべいの原料にもなりますよね。私の親戚は和菓子屋なので、米の価格が高騰したままだと、影響があるんじゃないかと心配しています。
5名の皆さんにインタビューをさせていただき、日本の農業について真剣に考えて向き合っていることが伝わってきました。

このような熱意のある若い人たちが農業に関わり、日本の食を支えてくれると頼もしいですね。

野菜科学研究会は、引き続き東京都立園芸高等学校の皆さんを応援しています。

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