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野菜科学研究会_学術記事

野菜摂取と死亡リスク低下の関係について

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国立がん研究センターでは、日本人の食習慣・生活習慣等とがんを含む様々な疾病との関係を明らかにし、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸に役立てるために観察研究(JPHC研究)を行っています。

こちらの記事でご紹介する研究は、その一環として1990年と1993年に、岩手県~沖縄県の10都府県に居住されていた40~69歳の方々に対して研究を開始し、5年後に食事調査を実施しました。

その時点でがん、循環器疾患等に罹患していなかった約95,000人を、2018年まで約20年間追跡し、野菜の摂取量と死亡リスクとの関連を調査した研究です。

研究では、食事調査の結果から野菜について一日当たりの摂取量を算出し、グループごとの人数が均等になるように摂取量順に5グループに分けました。
野菜摂取量が最も少ないグループを基準として、その他のグループにおけるその後の全死亡・がん死亡・心血管疾患死亡、呼吸器疾患死亡のハザード比を算出しました。

※ハザード比とは、相対的な危険度を客観的に比較する方法。この試験では1、を基準にそれより小さいとリスクが小さい、1より大きいと、リスクが大きいことになります。

この研究では、約20年間の追跡調査中に23,687人が死亡しました。

解析の結果、野菜摂取量の多いグループで、全死亡のハザード比が低くなる傾向を認めました。

野菜摂取量の最も少ない群と比較して、最も多い群で7%、二番目に多い群では8%低下していました。しかし、がん死亡や心血管疾患死亡、呼吸器疾患死亡のハザード比に、統計的な差はありませんでした。

野菜摂取量が多ければ多いほどハザード比が低下するわけではなかったため、ある程度の量を摂取すれば、効果が頭打ちになることが考えられます。

今回の結果から、研究グループは、野菜については300g以上摂取することが望ましいと述べています。
現在日本人の平均野菜摂取量は約280gですので、目標量である350gはすぐには難しいかもしれませんが、300gならあと20gなので何とか頑張れそうです。

この研究の限界として、食事調査は1回しか実施しておらず、20年の追跡期間中の食事内容の変化については調査していないことには注意が必要です。

Yuki Sahashi et al., Inverse Association between Fruit and Vegetable Intake and All-Cause Mortality: Japan Public Health Center-Based Prospective Study, The Journal of Nutrition,https://doi.org/10.1093/jn/nxac136

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