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栽培の仕方によって味は変わるのか:野菜の大規模な官能分析

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最近では、「有機栽培」や「地元で採れた野菜」など、いろいろな育て方をした野菜が売られています。しかし、栽培の違いで本当に味は変わるのでしょうか?

野菜科学研究会が紹介するこちらの論文では、次の3つの方法で育てた野菜の味がどれくらい違うのか、どの栽培方法の野菜がおいしいと感じられるのかを調べています。

1.従来の栽培方法
2.有機栽培
3.不耕起栽培(ふこうきさいばい)
※土を耕さずに作物を育てる方法です。不耕起栽培については、別のコラムでも紹介しています。

【調査方法】

そら豆、グリーンピース、ズッキーニ、ビーツ、きゅうり、トマト、ピーマンの7種類の野菜について、915人の消費者が味を評価しました。
野菜はすべて新鮮で、できるだけ同じくらいの鮮度になるように用意しています。

調査は、次の2つの方法で行いました。

・3点比較法:3つのサンプルから、1つだけ味が違うものを選んでもらうテスト。消費者が、野菜の味の違いを認識できるかを検証します。

ヘドニックテスト:複数のサンプルを出して、消費者に好きな順に並べてもらうテスト。どれがおいしいと感じるか、嗜好性の程度を評価します。

※野菜の種類によって、味を評価した人の人数にばらつきがあるので、その点もふまえて結果をご覧ください。

【結果】

3点比較法の結果では、全部で15のテストのうち10のテストで、消費者が違う栽培方法で育てた野菜をちゃんと見分けることができました(p < 0.05)。

つまり、多くの人が栽培方法による味の違いを感じ取ったということが分かります。

ただし、異なる農地で栽培されたことによる影響も考えられるため、今後さらなる検証が必要です。

さらに、不耕起栽培と有機栽培の野菜は、従来の方法で育てた野菜よりおいしいと感じる人が多い傾向がありました。ただし、すべての野菜で大きな差が出たわけではなく、栽培方法による好みの差は、そこまで大きくないことも分かりました。

一方で、トマトに注目した結果では、不耕起栽培のトマトがいちばん好まれるというはっきりした結果が出ました。不耕起栽培は、トマトのおいしさを高めるかもしれません。

FAO(国連食糧農業機関)は、持続可能な農業として「環境にやさしい農業」をすすめています。不耕起栽培も、そのひとつです。

環境を守りながら、おいしい野菜も育てられるとしたら、とてもいいことですよね。

これからは、有機野菜と同じように、「不耕起野菜」もブランドとして注目されるかもしれません。

【引用文献】

S. Loustau et al., Large sensory analysis of vegetables from conventional, organic and no-till practices, Journal of Agriculture and Food Research, 2024, 18:101451.

https://doi.org/10.1016/j.jafr.2024.101451

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