
野菜の摂取量は、「健康」より「味」の魅力を伝えたときに増加する
レストランや食堂で、料理を注文しようとしているとします。
メニューやPOPに次のように表示されていたら、どれを一番食べたいと思いますか?

人が野菜料理を選ぶとき、「これは体にいいですよ」と書いてあるよりも、「おいしそう!」と思わせるほうが、人は野菜をたくさん食べたくなるのです。
野菜科学研究会のこちらの記事では、野菜の摂取量の増加には、どんなメニュー表示やラベルが最も効果的かを調査・研究した結果について紹介します。
アメリカ・スタンフォード大学をはじめとした研究チームは、5つの大学食堂を対象に実験を行いました。
実験では、食堂の野菜料理のメニュー表示やラベルには、以下の3つのパターンの文言を加え、どのパターンの表示が野菜の摂取量の増加に最も効果的かを調べました。

① 基本的な表示
② 健康を強調した表示(野菜の栄養素や健康的な側面に焦点を当てた文言)
③ 味を強調した表示(味や食材、特定の地域名にちなんだ文言)
【実験方法】
・対象:Menus of Change 大学共同研究体(MCURC)の加盟校5校
Menus of Change 大学共同研究体とは、食の専門家や研究機関、大学が共同で設立するグローバルネットワークのことです。エビデンスに基づく研究や教育を通じて、健康的・持続可能・よりおいしい食品や食生活を推進しています。
・評価方法
食堂のメニューおよび野菜料理は、3〜5週間おきに計3回繰り返され、野菜料理には繰り返し周に応じて①〜③の表示が添えられました。
ただし、学校Aは②③の2サイクルのみ行っています。
計185日間分、135,842名、野菜料理71品目についてのデータが収集されました。
【実験結果】
健康強調表示と比較して、味を強調表示した場合は、食堂で野菜料理を選択した人の割合は約29%、野菜の摂取量は約39%高くなりました。
野菜の消費量は、学校Aのみの結果です。
特に日頃の野菜料理がおいしいと評価されている食堂では、この傾向がさらに強く示されました。

※異なる文字間で有意差あり(p<0.05)
この結果から、野菜をもっと食べてもらうには「健康に良い」という理由ではなく、「これ、おいしそう!」という期待を引き出す工夫が効果的だということがわかります。
「おいしそう」と思って食べてみたら、本当においしかったという体験があると、次からも野菜を前向きに食べようという気持ちになり、だんだん野菜をおいしく食べる習慣が形成されます。
スーパーで野菜を選ぶときや、小さなお子さんに野菜をすすめるとき、ついつい、「野菜は健康にいいから食べなきゃ」と言ってしまっていませんか?
今後は、「これ、旬でおいしいんだよ」「今日は、新しい味つけにしてみたよ」と、味の魅力を伝えてみてはいかがでしょうか。
野菜を「がまんして食べるもの」から、「楽しみにできるもの」へ変化させる。
それが、健康的な食生活を自然に続けるコツなのかもしれません。
【引用文献】
- Bradley P. Turnwald et al., Increasing Vegetable Intake by Emphasizing Tasty and Enjoyable Attributes: A Randomized Controlled Multisite Intervention for Taste-Focused Labeling, Psychological Science, 2019, 30(11):1603-1615.
https://doi.org/10.1177/0956797619872191
- MCURCについて:https://www.moccollaborative.org/