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皮膚カロテノイド量と動脈硬化リスクの関連について

皮膚カロテノイド量と動脈硬化リスクの関連について

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日本人の平均野菜摂取量は約270~280gと推定されていますが、これは国民健康・栄養調査により得られたデータです。

国民健康・栄養調査の対象に選ばれた人は知っていると思いますが、食品の摂取状況については、世帯毎に摂取した食品を全て秤量して記録することにより算出します。では、私たちが普段の野菜の摂取量を把握するには、どうしたら良いでしょうか?

食事の度に食べた野菜の重さを測定することは、外食が多かったり、お惣菜として購入したりすると現実的ではありません。そのため、大体の目分量で野菜の摂取量を推定せざるを得ませんが、やはり正確さには欠けます。

最近では、野菜の摂取量を推定するのに色々な方法が開発されています。
その一つに、「⽪膚カロテノイド量」を測定することで野菜摂取量を推定する方法があります。

野菜には、体の中で合成することができず、他の⾷品類には殆ど含まれないカロテノイド(βカロテン、リコピン、ルテイン等)という特有の成分が存在します。これが体内に吸収されると、⾎液の中に移⾏し、その後2週間程度で全⾝の⽪膚に分布することが分かっています。

最近では、日本でも⽪膚カロテノイドを非侵襲で測定できる装置が多く出回っているので、展示会やイベントなどで測定したことがある方もいるかもしれません。
こちらの記事で紹介するのは、光学⽪膚カロテノイド量測定装置で得られた測定値と動脈硬化性心血管疾患リスクの関係を評価した研究です。

カロテノイドは抗酸化作用があり、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の予防や進行抑制に関与していることが分かっています。本研究では、食事からのカロテノイド摂取量を反映する皮膚カロテノイド(SC)レベルとASCVDリスクの関連性を評価しました。

対象者は、静岡県浜松市の聖隷予防検診センターにて健康診断を受診した人のうち、心筋梗塞、脳卒中、がんの既往歴がなく、初めてSC測定を受けた方で、リスク評価に必要なデータの揃っている1,130人です。ASCVDリスクは、日本動脈硬化学会の「動脈硬化性心疾患予防ガイドライン2022年版」の久山ASCVDリスク予測モデルを用いて評価。このうち、4.6%が中等度以上のASCVDリスクを有していました。

SCレベルにより5分位に分け、中等度以上のASCVDリスクとの関連を年齢とBMIを調整した「ロジスティック回帰分析」を用いて評価していきます。すると、SC五分位の調整オッズ比(95%信頼区間)は、最もSCが低い群と比較して、最も高い群で0.25(0.08–0.77)でした。また、SCレベルの5分位の残りの3群について最も低い群と比較した調整オッズ比は、SCレベルが高い方から順番に、それぞれ0.42(0.17–1.03)、0.46(0.20–1.06)、0.46(0.21–1.02)という結果になりました。

日本人成人では、SC値は中等度以上のASCVDリスクと逆相関を示しています。
簡便で非侵襲的なSC測定は、心血管疾患の予防のために野菜摂取を推奨するための良い指標となる可能性があるでしょう。

Akira Obana et al.,Association between atherosclerotic cardiovascular disease score and skin carotenoid levels estimated via refraction spectroscopy in the Japanese population: a cross-sectional study, Scientific Reports volume 14, Article number: 12173 (2024).

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