学術情報
都市排水を使用して栽培した野菜の安全性について

都市排水を使用して栽培した野菜の安全性について

この記事をシェアする

野菜を生産するには、大量の水が必要です。
例えば、キャベツ1個を生産するには82リットルの水が、かぼちゃ1個を生産するには371リットルの水が必要と算出されています。※1

近年、気候変動の影響から干ばつが猛威をふるい、作物の生育に必要な水が供給されない農地や地域が増えています。

ヨーロッパでは、2022年から2023年にかけて大規模な干ばつが発生しました。

干ばつの影響でオリーブが生育不良となってしまい、オリーブオイルの生産量は激減。さらに、オリーブオイルは大幅に値上げされ、私たちの生活にも影響が出ています。

では、将来にわたって安定した食料供給をするために、どのように水を確保したらよいでしょうか。
一つの解として、都市廃水の利用が検討されています。
生理的には受け入れにくいかもしれませんが、背に腹は代えられないところまできているのが事実です。

野菜科学研究会では、ベルギーで行われた、都市廃水を利用した野菜生産での安全性を検証する研究について紹介します。

近年、ヨーロッパでも水不足に直面する地域が増えています。
その原因は気候変動、人口増加、都市化、工業化、地下水の過剰取水、非効率的な灌漑慣行など、さまざま。ベルギーは、ヨーロッパの中で最も水不足のリスクに直面している地域の一つです。

特に、夏季の野菜作物の灌漑(かんがい)を地表水と地下水に依存することは、もはや持続可能な選択肢ではなく、代替水源の探索が不可欠です。※2

このような代替水源の一つとして挙げられているのが、処理された都市廃水です。
都市廃水は主に家庭廃水に由来するものですが、産業廃水が含まれる場合も。
廃水は、有機物、栄養素(窒素、リンなど)、金属および病原微生物が豊富であるため、環境に排出される前に浄化処理が行われます。

ベルギー・フランドル地方の年間農業用水需要量は7,200 万m3と試算されていますが、この地域の都市廃水のうち1億5000万m3が再利用可能と見込まれ、重要な代替水源の可能性を秘めているのです。

この研究では、次の二つについて評価を実施しました。

①処理済み廃水を保管することで微生物数がどのように変化するか
②処理済み廃水を野菜生産に使用した場合の野菜に付着する微生物数に与える影響

結果は、浄水処理直後の廃水では大腸菌、セレウス菌、エロモナス菌、緑膿菌などが3logCFU/100ml以上検出され、EUが指定する農業灌漑のための再生水の水質要件を規定する法律(2020/741/EC)の基準を超過。

廃水の保管期間が延びるにつれて微生物数は減少し、大腸菌は7日間保管後は約2.8log、32日間保管後は約4.8logCFU/100ml減少しました。しかし、芽胞を形成するセレウス菌は殆ど減少しませんでした。

また、処理直後の廃水で育てた野菜には、多くの種類の微生物が検出されましたが、7日間保管後の廃水で育てた野菜中の微生物は大きく減少していることが確認されました。
さらに灌漑後収穫までの待機期間を設定したところ、7日間の待機期間でサルモネラ属菌を除く全ての微生物は検出されませんでした。

結論として、廃水処理水を最大7日間保管し、灌漑と収穫の間に7日間待機することを組み合わせると野菜から大腸菌が検出されず、微生物汚染を最小限に抑えるという有望な結果が得られました。
ただし、現時点では法律に準拠するため、廃水処理水を代替水源として安全に使用するには、消毒などの追加処理が依然として必要です。

※1 環境省ホームページ バーチャルウォーター量一覧表
※2 灌漑:農地へ水を人工的に供給すること

Hanne Vanmarcke et al.,Impact of using stored treated municipal wastewater for irrigation on the microbial quality and safety of vegetable crops, Agricultural Water Management, Volume 297, 31 May 2024, 108842. 

https://doi.org/10.1016/j.agwat.2024.108842

公式SNS
フォローしてね

このサイトをシェアする