野菜の保存法の進化 ナノエマルジョンコーティング
現代社会では、人々のライフスタイルや意識の変化、技術の進歩などにより、安全で健康的な食品へのニーズが高まっています。
健康面から考えると、野菜は高い需要がありますが、収穫後の鮮度劣化が非常に速い食材です。
毎年、世界中で多くの野菜が食べられることなく廃棄されています。そのため、これまでも様々なポストハーベスト技術が研究されてきました。
保存安定性を維持し、賞味期限を延ばすための方法の一つとして「食品のコーティング技術」があります。このレビューでは、生鮮食品へのナノエマルジョンコーティングに関する最新の研究を取り上げています。
野菜の収穫後の鮮度劣化を防ぐ方法の一つとして、抗酸化特性や抗菌特性などを発揮する、薄層の食用コーティング技術があります。これらの技術を適用することで、野菜の保管および輸送中の鮮度劣化を抑制する結果が得られています。
食用コーティング技術は、主に2種類に分類されます。
一つは液体状態で食品に塗布する技術であるコーティング、もう一つは固体の食用シートを食品に貼り付ける技術であるフィルムです。それぞれ塗布手順に加えて厚みに違いがあり、コーティングは0.025mmより薄いのに対し、フィルムは通常0.050 mmより厚いのが特徴です。
食用コーティング技術を施すことで、酸素透過性や水蒸気透過性を低下させます。
また、抗菌剤、抗酸化剤、栄養素でもある色素等を含有させることで、様々な品質劣化を抑制することができます。例えば、酸化による品質劣化や呼吸による栄養素減少の抑制、微生物の繁殖による腐敗の遅延、蒸散による水分量減少を抑制する事による軟化の防止、褐変の防止など、様々な効果を発揮します。
ナノテクノロジーの進化により、コーティング技術にも、微細な粒子サイズの「ナノエマルジョン」が活用されています。ナノエマルジョンに、生理活性化合物、保存料、香料、ビタミン類などの成分を含ませることにより、食用コーティングの機能を高め、食品の品質を向上させることができるのです。
通常、ナノエマルジョンベースの食用コーティングは、多糖類、タンパク質、脂質の3つのグループに分類できる食用ポリマーから作られています。
食用フィルムおよびコーティングの開発において、単一のポリマーを使用する場合と比較して、食用ポリマーの組み合わせを利用することで、いくつかの利点が得られています。
例えば、酸素バリア性の高いポリマーと水蒸気バリア性の高いポリマーを組み合わせることで、両方の特性を付与することが出来ます。
食用コーティングの組成と性能の柔軟性は、食品の保存と品質向上という2つの重要な目的を実現する革新的な包装技術を生み出す可能性があります。
さらに、プラスチック製の包装の必要性を減らすことで、食用コーティングは廃棄物の削減に繋がり、環境にプラスの影響を与えるため、将来的に望ましい選択肢と考えられています。
Cvanić T et al.,Progress in Fruit and Vegetable Preservation: Plant-Based Nanoemulsion Coatings and Their Evolving Trends. Coatings 2023, 13(11), 1835. https://doi.org/10.3390/coatings13111835