野菜摂取と高齢者の認知症発症リスク低下について
認知症の患者数は、世界中で増加しています。
2015年には世界の患者数は4700万人でしたが、2050年までに1億3200万人に増加する事が予想されています。
認知症は様々な要因で発症しますが、食事は認知症のリスクを減らすための予防的要因です。
この研究では、福岡県久山町において、野菜やそれらの栄養素の摂取量と認知症(アルツハイマー型又は血管性認知症)の発症リスクとの関係を調査しました。
1988年に、認知症ではない60歳以上の男女1071名を対象に野菜の摂取量を半定量的食品摂取頻度アンケートを使用して評価しました。性
別ごとに野菜の摂取量を基に4分位に分けて、1988年から2012年までの24年間前向きに追跡しました。追跡期間中は毎年健康診断を行い、認知症の発症者を特定したところ、24年の間に464名が認知症を発症しました。
結果として、野菜の摂取量が多くなると、アルツハイマー型認知症の発症リスクが低下する事が確認されました。
4分位に分けた野菜摂取量が最も多い集団は、最も少ない集団と比較して、アルツハイマー型認知症の発症リスクが31%低下していました。
また、栄養素で評価すると、ビタミンA、ビタミンB2、ビタミンC、マグネシウム、カルシウム、およびカリウムの摂取量が増えると発症リスクは減少しました。
以上の結果より、野菜が豊富な食事は、日本人の認知症のリスクを減らすのに役立つ可能性があります。
ただし、本研究では食品摂取頻度調査は研究開始時に一度測定しただけであり、24年間の追跡期間中の食事内容の変化を考慮していないことには注意が必要です。
【出典】
Yasumi Kimura et al.,Long-term association of vegetable and fruit intake with risk of dementia in Japanese older adults: the Hisayama study,BMC Geriatrics,2022,doi: 10.1186/s12877-022-02939-2