コンピュータを使ったパーソナル健康サービスによる野菜摂取量への影響
健康的な食生活を日々実践するのは、なかなか難しいことですよね。
野菜や果物を積極的に摂りたいと思っていても、脂質、炭水化物の誘惑に負けてしまう人は多いのではないでしょうか。意志がかなり強い人か、誰かのサポートがないと、健康的な食生活を継続させることは難しいと思います。
最近では、そのような方向けに嬉しいアプリ等が数多くリリースされています。
個人の状況に応じて食生活を提案してくれたり、食事内容を入力すると褒めたり、行動のアドバイスをしてくれたり。このようなコンピュータを利用したパーソナルな健康サービスは、どのくらい効果があるのでしょうか?
こちらの記事では、特に食生活に気を付ける必要がある、40歳以上の中高年が、長期にわたってコンピュータによる健康コミュニケーション(Computer-tailored health communication =CTC)を利用した際の野菜・果物の摂取量の変化について纏めた論文を紹介します。
この研究レビューは、40歳以上の中高年が野菜・果物の摂取量を増加させるためにCTCを長期(12カ月)に利用した際の有効性を評価し、どのような人が食生活を変更することが出来たかを特定することを目的として実施しました。
1990年1月1日から2022年1月1日までに出版された論文の中から、CTC 介入群と通常の食生活である対照群を比較するランダム化比較試験 (RCT) を検索。系統的文献レビューには16のRCTを、メタアナリシスには11のRCTを選択しました。(※1)
結果として、系統的文献レビューでは、介入12カ月後に改善の程度には差があるものの、ほとんどの介入群は対照群と比較して野菜・果物の摂取量が増加していたのです。また、メタアナリシスにおいても、研究の半分以上で介入群の野菜・果物の摂取量は有意に増加しており、介入群の改善が少なくとも 1 年間続く可能性があることを示していました。
また、全員が女性、または大部分(60%以上)が女性の集団を対象とした 7 件の研究のうち、6 件は介入群において12 か月後の摂取量の有意な改善が認められました。この結果は、中年以上の女性が介入後の野菜・果物摂取量の増加と維持に成功しているグループであることを示唆しています。
女性が男性よりも野菜・果物の摂取量を増やす傾向があるという、食行動に関する以前の研究と一致しています。また、今回の研究参加者の平均脱落率は23.6%と高かったのですが、ウェブベースの介入では予想される数値でした。
この研究は、CTCが中高年者に対して介入後 1 年間、野菜・果物の摂取量を増加させるのに役立つことを示しています。したがって、CTC は、40 歳以上の成人の野菜・果物の摂取量を増やすことを目的とした公的介入に適した戦略であると考えられます。
※1)メタアナリシス:ある程度似ている研究の複数の結果を統合し、ある要因が特定の疾患と関係するかを解析する統計手法
Andreja Misir et al.,Twelve Month Efficacy of Computer-Tailored Communication in Boosting Fruit and Vegetable Consumption Among Adults Aged Forty and over: A Three-Level Meta-Analysis and Systematic Review of Randomized Controlled Trials, Advances in Nutrition Available online 17 November 2023, 100150