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野菜中の硝酸塩濃度の国別比較

野菜中の硝酸塩濃度の国別比較

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硝酸塩は、自然界に一般的に存在しています。
野菜などの植物は、窒素を硝酸塩やアンモニウム塩の形で吸収し、これと光合成で得られた炭水化物から、体内でアミノ酸やタンパク質を合成します。しかし、吸収される硝酸塩の量が多すぎることや、環境により生育が不十分などの理由で、吸収された硝酸塩類がアミノ酸やタンパク質に合成されず、そのまま植物中に留まると考えられています。

硝酸塩は、日常摂取する量であれば、特に人体に有害ではありません。しかし、大量に摂取した硝酸塩がヒトの体内で還元され亜硝酸塩に変化すると、メトヘモグロビン血症という疾患を引き起こしたり、発ガン性物質であるニトロソ化合物の生成に関与するおそれがあると言われています。

今回、野菜科学研究会が紹介する文献は、野菜の種類別に硝酸塩・亜硝酸塩の濃度を世界規模で調査し、まとめた内容です。

人口の増加と農産物の需要の増加に伴い、収量を改善するため大量の窒素肥料が使用されています。これが硝酸塩増加の原因となっているのです。しかし、それだけではなく植物の品種、年間降雨量、気温なども重要な要因となっています。

硝酸塩の摂取は、いくつかの種類の癌やメトヘモグロビン血症、および甲状腺障害の発生に関連していると考えられています。しかし複数の研究では、硝酸塩が血圧の低下、血小板凝集の阻害、内皮機能障害の改善など、心血管系に有益な効果があることが報告されています。なお、葉物野菜や果物には、高レベルの硝酸塩が含まれており、食事由来の硝酸塩中約 85% を占めるという報告があります。

今回、野菜に含まれる硝酸塩と亜硝酸塩の量について、信頼できるグローバル電子データベースを用いて検索を行い、得られた結果のメタ分析を実施しました。

野菜の種類ごとの硝酸塩と亜硝酸塩の総量については

1位 ルッコラ
2位 水菜
3位 チンゲン菜

となっていました。

次に野菜の硝酸塩濃度の国別比較をすると、トップ3は

・ブラジル
・エストニア
・台湾

でした。日本は、調査対象19か国中7位でした。

ただし、これは常に固定された数値ではなく一例です。

多くの研究をまとめると、野菜と果物の硝酸塩と亜硝酸塩のレベルは非常に変動が大きく、国だけでなく地域によっても異なります。硝酸塩濃度には、植物ごとに異なる吸収と輸送による差、pH値、日光の強さ、収穫量など、さまざまな要因が影響を与える可能性があります。

この研究は、さまざまな野菜や果物の硝酸塩/亜硝酸塩含有量のデータベースを開発するために世界的に実施された最初の研究です。

Mir-Jamal Hosseini, et al.,A worldwide systematic review, meta-analysis and meta-regression of nitrate and nitrite in vegetables and fruits, 
Ecotoxicology and Environmental Safety, Volume 257, 1 June 2023, 114934,
https://doi.org/10.1016/j.ecoenv.2023.114934

参考資料
農林水産省 食品中の硝酸塩に関する基礎情報https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/about/

食品からの硝酸塩の摂取量
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/syosanen/ganyu/index.html

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