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野菜廃棄物中の付加価値物質の有効利用について

野菜廃棄物中の付加価値物質の有効利用について

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2020年度農林水産省のデータによると、現在、日本では年間約522万トンの食品が廃棄されています。

ここ数年、徐々に減ってはいるものの、まだ多いのが実状です。
食品廃棄物はもったいないだけでなく、焼却処理する際に二酸化炭素を排出するなど環境にも悪い影響を与えます。WWF(世界自然保護基金)の報告によると、世界中で年間に排出される二酸化炭素のうち約10パーセントを食品廃棄物が占めると試算されており、地球温暖化による気候変動の一因になっています。

更に前述した廃棄物とは別に、収穫から商品化までの間にも膨大な廃棄が発生しています。
これらの廃棄物を減らす、または有効に活用することで、地球環境への負荷軽減や食糧安全保障への対処、生産コストの低減などをもたらします。

今回紹介する論文は、食品産業で発生する野菜の廃棄物に含まれる付加価値成分について取り上げています。

野菜の収穫後、加工や消費の過程でかなりの量の廃棄物が発生します。
この廃棄物には、高レベルな生理活性物質を含む、葉・皮・不要な果肉・種子などがあります。
いくつかの研究により、ビタミンや食物繊維、フラボノイド、アントシアニン、カロテノイド、フェノール酸などのファイトケミカルが特定されています。

野菜の廃棄物由来の付加価値成分として今後有効利用が期待されるものには、次のものが報告されています。

・ブロッコリーとアーティチョーク由来の「フェノール酸」と「フラボノイド」

・たまねぎの皮由来の「フラボノイド」


・アーティチョーク、赤ピーマン、ニンジン、キュウリ由来の「フェノール酸」、「フラボノイド」、「食物繊維」


・じゃがいもの皮由来の「フェノール類」、「フラボノイド」、「アントシアニン」、「カロテノイド成分」


・なすの皮の廃棄物由来の「フェノール類」、「フラボノイド」、「アントシアニン化合物」

フェノール酸やフラボノイドなどのポリフェノールが豊富な化合物は、食品に含まれる活性酸素種を除去できるため、優れた抗酸化能を示します。また、野菜廃棄物の抽出物には抗菌作用を示すものがあり、抗菌剤としての使用が期待されます。

他にも、生鮮野菜の品質劣化を引き起こす褐変反応阻害作用を示すものも発見されていますし、アントシアニン、カロテノイド、クロロフィルなどは天然由来の顔料としての利用も検討されています。

野菜は、収穫後の加工、流通、および消費中に大量の廃棄物を生成する農産物です。
廃棄物を有効利用することで、生産コストの削減や、食の持続可能性が向上します。しかし、現状では廃棄物の利用はまだ検討途上にあります。

今後の研究では、廃棄物から取り出した有効成分に農薬や有害成分が含まれていないことを確認することや、抽出時のコストダウンやエネルギー効率などに焦点を当てる必要があります。

Nasir Md Nur ‘Aqilah, et al.,A Review on the Potential Bioactive Components in Fruits and Vegetable Wastes as Value-Added Products in the Food Industry, 

Molecules 202328(6), 2631; https://doi.org/10.3390/molecules28062631 

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