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地球の温暖化に対応する野菜の開発

将来の温暖化に対応する野菜の開発

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過去100年、地球の平均気温は上昇し続けています。
長期的に考えると、100年あたり0.74℃の割合で上昇していることになります。

1990年代半ば以降、平均気温が高い年が多くなっており(※)、体感でも温暖化を感じている人が多いと思います。
※気象庁 世界の年平均気温より

「0.74℃の割合で気温が上昇している」と聞くと、大したことないように感じるかもしれません。
しかし、世界中で氷河や氷床が溶けて海面が上昇し、かんばつ、ゲリラ豪雨を含む大雨、台風等の増加や大型化といった異常気象を引き起こしているのです。

気温が上昇すると、野菜の生産にも大きな影響をもたらします。
冷涼な気候を好む野菜は、より高緯度の寒い地域でないと育たなくなり、温暖な気候を好む野菜であっても、熱波により枯死してしまう可能性があります。
そのため、品種改良により早急に温暖化に耐性のある野菜を開発することが重要な課題となっています。

今回紹介する論文では、暑さに強い野菜の開発に不可欠な技術の展望についてまとめています。

温暖化は地球の植物の生態に悪影響を及ぼし、世界の食料安全保障を脅かすことが予想されています。

高温による熱ストレス (HS) は、生育不良や結実不良を引き起こし、水分の蒸発速度が高まることで塩分の蓄積などを引き起こします。

例えば、高温下ではジャガイモの収量は35%減少したことが報告されています。また、ピーマン、トウガラシ、トマトはそれぞれ 93%、91%、98% の収量減少を記録しています。
予測された気候変動モデルによると、今世紀後半には、高温による作物の収量損失は世界全体で40%増加するというシミュレーションがあります。

そのため、植物育種研究者たちは、高温ストレスに対して耐性のある野菜の品種を開発しようとしています。
従来の育種方法だと時間と労力がかかり、最低でも10年程度の期間が必要です。しかし、近年急速に進歩しているゲノム編集技術なら、大幅に時短して温度耐性のある新品種の開発が可能なのです。

ゲノム編集は、目的の変異を生み出すために、オリゴヌクレオチド誘発突然変異導入技術(ODM)(※)及び、近年様々な分野で応用が進んでいるDNAを切断する人工の制限酵素を用いた遺伝子改変技術(ZFNs、TALENs、CRISPR/Cas9)が広く使用されています。
※オリゴヌクレオチド誘発突然変異導入技術:従来から研究されている、生物の内在遺伝子に人為的な変異を誘導させるための技術

しかし、熱ストレス耐性を生み出すためのゲノム編集アプリケーションは、いくつかのモデル作物のみと限定されています。

熱ストレスに対する植物の応答は、遺伝子調節に依存しています。従って、品種改良にあたり、これらの分子メカニズムと生物学的ネットワークを理解することが必要なのです。

さまざまなオミクスアプローチ(※)は、重要な遺伝子やそれらの相互作用、および熱ストレスへの曝露時に様々な代謝経路で発生する調節を見つけるのに役立ちます。
※オミクスアプローチ:ゲノム情報を基礎として、生体を構成しているさまざまな分子を網羅的に調べていく方法

現時点では、穀物と比較して熱ストレスに対する野菜の適応に関する研究は、まだ少ないのが現状です。
しかし、上記のゲノム編集技術等を更に強化することにより、高温耐性野菜を生み出すことは可能になっています。

今後は、品種改良された高温耐性野菜が市場に出回る際、消費者がそれを受容できるかどうかも課題になっています。

Faisal Saeed et al.,Developing future heat‑resilient vegetable crops, Functional & Integrative Genomics,volume 23, Article number: 47 (2023), 

https://doi.org/10.1007/s10142-023-00967-8

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