学術情報
2型糖尿病マウスモデルにおけるにんじん摂取による耐糖能、微生物叢、遺伝子発現への影響

2型糖尿病マウスモデルにおけるにんじん摂取による耐糖能、微生物叢、遺伝子発現への影響

この記事をシェアする

「2型糖尿病」という病気を聞いたことはありますか?

2型糖尿病(T2D)とは、体がうまく血糖値を調節できなくなる病気のことです。
2015年時点で、世界中の4億1,500万人の成人がこの病気を患っており、2040年にはさらに4,200万人増加すると予想されています。

身近な病であるT2Dですが、にんじんを摂取することによって血糖調節が改善される可能性があるのです。

野菜科学研究会のこちらの記事では、T2Dマウスモデルにおけるにんじん摂取の代謝効果を調査・研究した結果について紹介します。

にんじん

T2Dの治療法には、食事療法・身体活動の増加・血糖降下薬があります。
血糖降下薬は、腸内細菌叢の調節など、様々な作用機序により低血糖効果を発揮する治療法です。

そして、T2Dの調節にはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体が極めて重要です。

にんじんには、アセチレンオキシリピンの(3R)-ファルカリノール(FaOH)や(3R,8S)-ファルカリンジオール(FaDOH)という生理活性物質が含まれています。

これらの物質が、T2Dの調節に重要な「ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体」 を活性化することが報告されています。

本研究は、T2Dマウスモデルにおけるにんじん摂取の代謝効果を調査し、その根底にあるメカニズムを解明する目的で実施されました。

T2Dマウスモデルにおけるにんじん摂取の代謝効果の調査・図解

まず、2型糖尿病を誘発させたマウスを3群に分けました。

1群は低脂肪食を、他の2群には高脂肪食を与えます。高脂肪食群の1つには、フリーズドライのにんじん粉末を10%加えて飼育しました。

16週間後に糖負荷試験を行った結果、低脂肪食群は血糖変動が最も少ないのに対し、高脂肪食群は血糖上昇が大きいことが明らかになりました。また、にんじん粉末を加えた高脂肪食群は、血糖上昇が少なく腸内細菌叢の多様性が高いことがわかりました。

T2Dマウスモデルにおけるにんじん摂取の代謝効果の調査・図解

こちらの研究結果は、にんじんを食事に取り入れることで「より健康的な」微生物叢を促進し、2 型糖尿病患者の血糖調節の改善に貢献する可能性があることを示唆しています。

引用文献

Kobaek-Larsen M, Maschek S, Kolstrup SH, Højlund K, Nielsen DS, Hansen AK, Christensen LP. Effect of carrot intake on glucose tolerance, microbiota, and gene expression in a type 2 diabetes mouse model. Clin Transl Sci. 2024 Dec;17(12):e70090. doi: 10.1111/cts.70090. PMID: 39625861; PMCID: PMC11613996.

参考

Care Net ニュース ニンジンが糖尿病治療の助けになる?(2025年3月19日閲覧)https://www.carenet.com/news/general/hdn/60075

公式SNS
フォローしてね

このサイトをシェアする