ヤサイビト_丹羽 真清さまハ

目指すのは「食で健康を追求すること!」日本ヘルスケア協会の丹羽さんに、野菜と健康について聞いてみた

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公益財団法人日本ヘルスケア協会の「野菜で健康推進部会」部会長を務める丹羽 真清さんは、大学卒業後、一貫して食品に関わるお仕事をされています。

しかし、ご家族のがんを経験し、「もう食の仕事はしたくない」と思ったこともあったそう。

その経験を乗り越え、”食で健康を追求する”と決めて活動されている丹羽さんに、「野菜で健康推進部会」の活動や、食と健康についての最新の知見など色々と伺ってみました!

ヤサイビト_丹羽 真清プロフィール


丹羽 真清(にわ ますみ)
公益財団法人日本ヘルスケア協会
野菜で健康推進部会 部会長
一般社団法人 食と農の生命科学研究会 代表理事
一般社団法人 日本アマニ協会 理事
株式会社ヤマナカ 社外取締役
株式会社アグリガーデンスクール&アカデミー 取締役

著書:『データが語る 美味しい野菜の健康力」「抗酸化の科学」「おいしいものは体にいい』『乳がんの人のための日常レシピ』
監修:『野菜は7色で食べよう』

略歴
椙山女学園大学 家政学部 食物学科 管理栄養士専攻卒業
大学卒業後食品メーカーに勤務し品質管理、商品開発を担当。退社後に食のコーディネーターとして独立し商品開発コンサルティングを行う。1999年デザイナーフーズ株式会社を設立。2013年デリカフーズ株式会社(現デリカフーズホールディングス株式会社)代表取締役社長に就任。2016年一般財団法人日本ヘルスケア協会の中に「野菜で健康推進部会」を設立し部会長を務める。2020年デリカフーズホールディングス株式会社 取締役を退任。2021年一般社団法人食と農の生命科学研究会設立。2022年日本ヘルスケア協会は公益財団法人となる。

夫のがんをきっかけに、食で健康を追求すること決めた

丹羽:
きっかけは色々あるんですが、大学で栄養学を専攻しようと思ったのは、高校二年の時の先生の影響ですね。ある日、休み時間に教室でお菓子を食べていたんですが、そのお菓子の匂いが残っている中、次の授業の英語の先生が入ってきたんです。そうしたら、「あなたたちの体は食べた物で出来ているんだから、いい加減なものを食べちゃダメなのよ」と、すごく怒られたんですね。授業そっちのけで1時間ずっと食べ物の話をされたんです。それがきっかけになって、食は大切なんだと思うようになり、管理栄養士のコースに行くことを決めました。

丹羽:
大学卒業後に入社した食品メーカーの会社では、商品開発を担当していました。私が入社した頃は業界全体が右肩上がりで成長していて、 とにかく新しいものを作ったら売れる時代だったんです。特に健康については意識せず、次から次へと売れそうなものを開発していました。

その後、30歳で独立をして食品メーカー向けのコンサルティングを手掛けました。数十社の商品開発コンサルをやっていたので、一生懸命売れるものを開発しました。

その頃、私は自分の夫ががんに罹っていたことに気付かなかったんです。夫が入院するときも、仕事が忙しく出張に行かないといけなくて。出張から帰ってきたら、病院で体中にチューブが繋がれて点滴をされていたんです。本当にびっくりして、その時の光景は、今でも覚えています。

それから亡くなるまでの5ヶ月間、夫は抗がん剤の副作用で何も食べられず、点滴だけで過ごしました。「私は食に関わる仕事をしてきたのに、なぜこんなことになったんだろう」と、ものすごくショックで。夫が亡くなった後、3ヶ月位何も手につきませんでした。当時の記憶は、今もないんです。

「もう食の仕事はしたくない」と思ったこともあったんですけど、仕事に復帰したら、今まで開発した商品や携わった商品を見ないわけにはいかないし、仕事をしないと生きていけない。それで、「食で健康を追求すること」を徹底してやろうと決意しました。その境地に至るまでには、更に数ヵ月はかかりましたけど。

日本ヘルスケア協会「野菜で健康推進部会」の目指すもの

丹羽 真清さん

丹羽:
日本ヘルスケア協会は、当初中心になったのは「日本チェーンドラッグストア協会」でした。そのため、ドラッグストア関係の人たちが今も役員、理事に多いんです。理事会の下に「日本ヘルスケア学会」と「日本ヘルスケア産業協議会」が設けられ、学会の方は学術的な面からの活動を行っています。産業協議会の下には業種別に24の部会が設けられており、野菜で健康推進部会は、その一つとして2016年に設立されました。

野菜で健康推進部会では、「プラネタリーヘルス(※)」という概念をベースに活動を進めています。プラネタリーヘルスというのは、【人類と地球の健康は密接に関わっており、人が健康であるためには地球の健康が保たれることが重要】だという考え方です。

つまり、植物や動物及び微生物、空気に水、川に畑に田んぼ、山に湖に海に至るまで全ての生き物や生き物が生存している環境も含めて地球全体の健康を考えないと、人の健康を保つことは出来ない、というのがプラネタリーヘルスの考え方なんです。

野菜で健康推進部会とお米で健康推進部会、土壌で健康推進部会の3部会がプラネタリーヘルスイニシアティブ(PHI)を設立して、協会の内外に広めていこうとしています。

野菜で健康推進部会の活動方針は、食品業界や消費者に野菜の知識を波及させることと、 野菜の摂取が健康に繋がるということを広めることです。ご存じのように、日本人の野菜摂取量は目標量350gに対して約70g足りていないので、今より70g野菜を多くとりましょう、ということを最初に始めました。

次に、ベジファースト、野菜から先に食べるということと、7色の野菜を食べようということを啓発しています。野菜から先に食べる効果は、今では多くの国民が知るところとなりました。また、野菜の色はカロテノイド類やポリフェノール類、フラボノイド類などのフィトケミカル由来で、ものすごく抗酸化力が高いので「7色の野菜を食べよう!」と覚えやすいキャッチフレーズを考えました。これらを農林水産省からの支援を受けて、野菜売り場等で野菜・果物等の健康効果を消費者に分かりやすく伝えるPOP表示(通称:Y-POP)で広めています。

野菜で健康推進部会会員は、3つのワーキンググループに分かれて活動を行っており、主には、①野菜の品質評価基準を作成する ②7色野菜のメニューブックを季節ごとに作成する ③野菜の付加価値(特に健康機能)の見える化をする という活動を進めており、いずれご紹介できるようになると思います。

(※)プラネタリーヘルスについての詳細はこちら ⇒ https://jahi.jp/phi/

健康に生きるために、野菜から菌を摂取する!

丹羽:
野菜から菌(微生物)を摂取して欲しい、と伝えるようにしています。 以前と比べて衛生的になったので、野菜から摂取する菌は非常に少なくなっていますが、野菜から摂取する菌が腸内細菌叢に大きな影響を与えていると考えられています。そして、菌が産生するLPS(リポ多糖)が人のマクロファージを活性化し、免疫に良い影響を与えることが研究によって分かってきています。野菜由来の菌が、腸内細菌叢のバランスを良くすることを知ってもらいたいですね。現在、大学の先生と共同で土壌細菌、野菜の菌及び人の腸内細菌と健康の関係を明らかにする研究を進めています。

丹羽:
ヘルスケア協会では、2週間に1回、定例でマスコミ向けに会見を開いて取組内容の発表を行っています。つい先日も、プラネタリーヘルスの話をしました。プラネタリーヘルスの話はもう3回ぐらい発表してます。オンラインでも聞けますし、もちろんリアルで参加して質問も自由に受け付けています。

国への提言については、現在、ワーキンググループで取りまとめている野菜の品質表示基準について、将来的に提言する予定で進めています。もう一つ重要なことは、活動の根幹を支える機能性成分のデータベースに関してです。現在は、海外のデータベースを根拠としていますが、著作権の問題などもあり、誰もが自由に使えるような状態になっていません。今後Y-POPを推進していくうえでも、日本の事情に対応して著作権の問題もクリアしたデータベースが求められており、国にも関わっていただけるよう提言をしていきたいと考えています。

SMTS展示会_丹羽 真清

丹羽:
部会の取組みというよりは私のライフワークのようなものですが、先ほどお話しした土壌菌も含んだ野菜に付着している菌の働きを突き詰めて研究していきたいと考えています。野菜を食べることは、ビタミン・ミネラル・食物繊維などの栄養素やフィトケミカルなどの機能性成分の供給源としてだけでなく、土壌由来の菌を体内に取り込ませるというのも重要な役割だと考えています。土壌細菌と野菜の菌、更に人の腸内細菌が密接に関係しているという関連性について明らかにしていきたいと考えています。

丹羽:
難しいですね。私自身は、余り健康的な生活を送っていないんです(笑)。実は、今年に入って少し体調を崩して、本当に久しぶりに医師に診てもらいました。30年近く、仕事以外では医師に会ったことは無かったんですけどね。

食生活では、野菜をしっかり食べることと、お米を食べることを意識しています。他には、栄養学を知っているので、特に意識しなくても一般的に言う健康的な食事を自然に食べていると思います。知っているのと知らないとでは、健康に大きな差がつくんですよね。

今はお金を出せば何でも手に入る時代なので、何を食べるかというよりも「何を食べないか」、ということを考えるのが大事だと思いますね。健康に良くないとわかっているものは、食べないと決めて実践することです。ただ、これも本当に好きな食べ物だった場合、必要以上に制限するのはストレスとなるので本末転倒です。毎日はダメでも、たまにはいいと思っています。

運動については特別なことはしていませんが、東京にいると歩いたり階段を上り下りする事が多くなるので、健康維持に良いのかもしれないですね。地方だと、ほとんど車での移動なので、意外と東京の方が体を動かすということを体感しています。

睡眠については、まとまって取ることは難しいんですが、隙間時間に寝るようにしています。私は、新幹線や飛行機に乗ったらすぐに眠れるのでそこは強みですね。もう、新幹線を見るだけで欠伸が出るくらいです(笑)。

丹羽:
私たちはいつも「野菜をたくさん食べて欲しい」と言ってるんですけど、講演の中では反対に、ただ野菜を食べれば良いというわけではないとも伝えています。つまり、量だけを意識して野菜を食べるということではなくて、野菜の質を見極めて選ぶということも大事だということです。

実は、一般消費者の中には野菜の品質については自分で評価できる人がほとんどいないので品質評価基準を整理することに取り組んでいるわけです。自分で野菜の品質を見極められるようになって、その質の高い野菜を食べて健康を維持できる社会を実現していきましょう!

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