猛暑から守れ!「消えゆく伝統野菜」を救う最先端テクノロジー

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私たちの食卓を豊かにしてくれる野菜たち。

しかし、今、日本各地で何世代にもわたって種を受け継いできた「在来野菜(伝統野菜)」の多くが、ひっそりと姿を消そうとしているのをご存じでしょうか。

その大きな原因の一つが、「地球温暖化」です。

特定の地域の気候風土に合わせて育ってきたデリケートな伝統野菜たちは、近年の異常な猛暑に耐えきれず、うまく育たなくなっています

さらに、農家の方々の高齢化や夏の過酷な労働環境も重なり、生産から手を引く人が後を絶ちません。

かつては当たり前のように食べられていた野菜が、まさに「幻の野菜」になってしまうピンチに陥っているのです。

そんな伝統野菜の危機を救うため、現在、さまざまな分野の最先端テクノロジー(アグリテック)が立ち上がっています。

こちらの記事では、気候変動に立ち向かう3つの「あっぱれなアプローチ」をご紹介します!

光を通して熱はカット!「魔法の遮熱カーテン」

植物が成長(光合成)するために必要なのは、400〜850nm(ナノメートル)という波長の光です。

一方で、太陽光に含まれる850〜1200nmの「近赤外線」は、浴びすぎると熱となって野菜に蓄積し、人間と同じような「熱中症(高温障害)」を引き起こしてしまいます

そこで注目されているのが、住友金属鉱山などが開発した「SOLAMENT®(ソラメント)」などの特殊な近赤外線吸収材料です。

この素材を使ったネットは、光合成に必要な光の波長だけを上手に通しつつ、暑さの源である太陽光の熱の波長をピンポイントでカットしてくれます。

これを活用した高機能遮熱ネット(青天張など)を用いれば、真夏のハウス内の温度上昇を効果的に防ぎながら、猛暑の中でも涼しく成長に適した環境を作り出せます。

野菜の声を聴く「AIとデータの守護神」

次に紹介するのは、ハウス内にセンサーを張り巡らせてデータを監視する、いわゆる「スマート農業」です。

農林水産省も推進しているスマート農業実証プロジェクトなどでは、ハウス内の土の中の水分量、温度、湿度、さらには日差しの強さまで、AIがリアルタイムで分析し、「複合環境制御装置」を通じて野菜の成長を支えています。

この装置は、得られたデータに基づいて、窓の開閉やミストの噴射などを「自動制御」するだけでなく、肥料や水の量を最適に調節する「肥培管理(ひばいかんり)」まで一括して行います。

「少し土が渇いてきたかな?」「ハウスが暑くなりすぎたな」というわずかな変化をセンサーがキャッチし、リアルタイムで最適な環境を維持する。

この精密なサポートによって、天候不順や猛暑の中でも、デリケートな伝統野菜を安定して育てることが可能になっているのです。

強い根を借りる「最新の接ぎ木(つぎき)技術」

最後は、生物学的なアプローチです。

美味しいけれど暑さに弱い野菜の苗を、暑さや病気に強い別の植物の「根(台木)」につなぎ合わせる「接ぎ木」という技術があります。

最近では、名古屋大学発のベンチャー企業「GRA&GREEN」などが、これまでは不可能だと思われていた「全く異なる種類の植物同士」をつなぐ驚きの技術「異科接木技術(iPAG)」を開発しました。

例えば、乾燥や塩分、猛暑にめっぽう強い植物の根を借りることで、環境の劇的な変化に迅速に適応させ、地域の伝統的な野菜を守り抜くことが期待されています。

さらに、極小の苗を安定してつなぐための「接木チップ」も開発されています。

何百年も昔から受け継がれてきた「伝統の種」を、現代の「最先端科学」が多角的なアプローチで守り抜く。

分野を越えた技術の結集があれば、日本の豊かな食文化は、これからも未来へつながっていくはずです。

私たちがスーパーで目にする伝統野菜の裏側には、こんな熱いテクノロジーが隠されているのかもしれません。

【出典・参考文献】
遮熱素材に関するアプローチ
参考ウェブサイト: 住友金属鉱山株式会社「真夏の農業用ハウスの室温上昇は防げないのか
https://crossmining.smm.co.jp/co-creation/nir_absorbing_materials_01

IoT・AI環境制御(スマート農業)に関するアプローチ
出典資料: 農林水産省「スマート農業をめぐる情勢について」(2026年3月)
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/smart_meguji.pdf

接ぎ木技術(生物学的アプローチ)に関するアプローチ
出典資料: 「JSTnews November 2020」(科学技術振興機構)
https://www.jst.go.jp/pr/jst-news/backnumber/2020/202011/index.html

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