意思決定する環境をデザインする「NUDGE(ナッジ)」を使って野菜の摂取量を増やそう
階段を使った方が健康にいいのは分かっているけど、ついついエスカレーターへ…。
野菜を食べた方が良いのは知っているけど、ジャンクフードに手が伸びる。
思い当たる…。
という方はいらっしゃるでしょうか?
頭ではわかっているけど、自分を律して行動に移すのは難しい。
それは、多くの人は、基本面倒くさがりだからです。
そんな怠惰な私たちが、より良い選択をするための面白い仕掛けが「NUDGE(ナッジ)」です。こちらの記事では、「NUDGE(ナッジ)」についてまとめていきます!
人が意思決定する環境をデザインする
「NUDGE(ナッジ)」とは、人が望ましい行動をとれるようにそっと後押しするアプローチのこと。
2017年、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授がノーベル経済学賞を受賞したことがきっかけで、大きな注目を集めることとなりました。
ナッジを利用した具体例には、例えば以下のようなものがあります。
- 男子トイレの便器に小さなハエの絵を描き、狙わせることで、清掃費を大幅に削減できたという事例
- スーパーのカートやカゴの大きさを変えることで、売上をアップさせるという取り組み
- 階段を使いたくなる仕掛けを施すことで、エレベーター利用を抑制する取り組み
多額の報酬や罰則といった強い手段は用いずに、人が意思決定する環境をデザインすることで、自発的な行動変容を促すのがポイントです。
「NUDGE(ナッジ)」を利用して野菜摂取量を増やそう!
このナッジを利用し、野菜摂取量を増やす取り組みを検証した研究を紹介します。
■券売機の配置を変えて、サラダの売上がアップ!
ある市役所の食堂の券売機にある「サラダ」のボタンは、通常、一番下の段にありました。
これを、目の高さに近くなるように配置し、文字が目立つようにフォントを大きく表示しました。
配置と表示を変える前後でサラダの売上数を比較したところ、ナッジによってサラダの売上数が増えました。
■ラベルのメッセージを工夫して、野菜の消費量がアップ!
アメリカの大学食堂で、野菜のメニューに「味」または「健康」に焦点を当てたラベルをつけて、野菜の消費量を比べました。
すると、「健康」よりも「味」重視のラベルをつけると、野菜の消費量が有意に増加しました。
「野菜を食べましょう!」と直接的なメッセージを伝えるような正攻法な働きかけも大事ですが、人間の特性を理解し、そっと「ひじで小突く」ような、野菜摂取増加を促す工夫を考えていきたいですね。
【出典】
村上智美ら. 健康的な食品の選択をナッジする:食堂における効果の検証と倫理課題の一考. 日本食育学会誌. 16(3): 121-28. (2022).
Turnwald, B. P. et al., Increasing Vegetable Intake by Emphasizing Tasty and Enjoyable Attributes: A Randomized Controlled Multisite Intervention for Taste-Focused Labeling. Psychological Science, 30(11), 1603–1615. (2019).