学術情報

国産野菜の向こう側 ーデータで紐解く、食卓と世界の繋がりー

この記事をシェアする

毎年8月、農林水産省から最新の「食料自給率」が発表されます。

今年公表されたデータによると、日本の食料自給率はカロリーベース(食べた熱量換算)で37%、生産額ベース(金額換算)で66%となっています。   

スーパーの青果コーナーに並ぶ「国産」の表示。鮮やかなキャベツやトマトを手に取るとき、私たちは無意識に「日本の土と資源だけで育てられたもの」というイメージを持つかもしれません。   

しかし、データをもとに生産の仕組みを分析してみると、国内で育てられた野菜であっても、その背景には肥料や種子など海外の資源と結びついたグローバルなネットワークが存在しています。   

私たちの食卓を支える「国産」という言葉の向こう側に、どんなデータと事実が隠されているのか、最新の食料自給率データとともに紐解いていきましょう。 

図1:日本の食料自給率の推移(1965年度〜令和7年度概算)

食べものによって異なる「自給率」のリアル

自給率の数字を食品群ごとに詳しく見ていくと、それぞれの生産事情や役割の違いが浮かび上がってきます。

図2:直近(令和7年度概算)の食品群別・品目別 食料自給率
品目自給率特徴・供給体制
お米95%主食として国内生産を中心とした供給体制が整っています。
野菜77%国内産が中心で、青果市場やスーパーでも高いシェアを占めています。
肉・魚約53%国内生産と輸入がバランスよく食卓を支えています。
果物38%バナナやグレープフルーツなど、気候的に適した海外産が補う構造です。
小麦・大豆小麦:16% 
大豆:7% 
パンや麺類、お豆腐、油脂類の原料として、広大な農地を持つ国々からの輸入に大きく依存しています。

野菜の「77%」という数字は、一見すると非常に高く、国内だけで完結しているように見えます。

ところが、その生産から流通までのプロセス(サプライチェーン)を紐解くと、また違った事実が見えてきます。

「国産野菜」を支えるサプライチェーン

実は、日本国内で育った「国産野菜」も、その育成に不可欠な「タネ(種子)」と「栄養(肥料)」の多くを海外に依存しています。

1. 種子採種における国際分業(自給率 約10%)

日本国内で流通している野菜の種子は、日本の種苗会社が開発した品種であっても、その多くは海外の農場で種子の生産・収穫がされています。

これは、雨が少なく病気が発生しにくい気候や、広大な土地といった「採種に適した環境」を世界規模で活用しているためです。そのため、国産野菜の種子自給率は、約10%にとどまっています。

2. 肥料原料の海外依存(自給率 ほぼ0%)

野菜が、健やかに育つために欠かせない化学肥料の3大要素(窒素・リン酸・カリウム)の原料鉱石は、地球上の特定の地域に偏在しています。日本にはこれらの資源がほとんど存在しません。

そのため、ほぼ100%を海外からの輸入に頼り、日本の高度な施肥技術・栽培技術と組み合わせることで高品質な野菜を育てています。

食卓の向こう側にある「仕組み」を知る面白さ

「国産野菜の自給率77%」という数字の裏側には、日本の農家さんの高度な技術だけでなく、世界中の気候や資源、物流ネットワークが複雑に組み合わさった仕組みが存在します。

「国産だから良い」「輸入だから不安」といった二項対立で捉えるのではなく、私たちの食がどのようなネットワークによって支えられているのかを客観的に理解すること。それこそが、これからの持続可能な食生活や農業について考える第一歩になるかもしれません。

あわせて読みたい関連記事

・種に込めた101年の想い。野菜不足を解決する品種改良の力

・広告マンから農家へ!27歳で就農した青年が継いだ「沃土会」の循環型農業

【参考資料・動画】
・農林水産省「食料自給率の推移(令和7年度概算)」
・農林水産省「種苗をめぐる情勢」
・財務省「貿易統計」ベース

公式SNS
フォローしてね

このサイトをシェアする