サラダと温野菜、心臓に良いのはどっち? 英国40万人追跡調査が示す意外な結果
「健康のために、毎日サラダを食べる」という習慣を大切にしている人は少なくないでしょう。でも、温野菜や野菜炒めでも、同じ効果が得られるのでしょうか?
野菜の摂取量が多い食生活は、心臓病や脳卒中などに代表される心血管疾患のリスクを下げる可能性があることが、これまで多くの研究で示されてきました。
その一方で、「生で食べるか、調理して食べるか」による健康への影響の違いについては、十分に整理されていませんでした。
野菜科学研究会が紹介するこちらの論文では、イギリスの大規模疫学研究を用いて、生野菜と調理済み野菜の摂取と心血管疾患リスクとの関連を検討しています。
約40万人を12年間追跡したこちらの研究は、「野菜をどれだけ食べるか」だけでなく、「どのように食べているか」に注目しています。

「生」と「加熱」なぜ、食べ方で違いが出るのか
こちらの研究は、“前向きコホート研究”と呼ばれる方法で行われました。
“前向きコホート研究”では、調査開始時点の健康状態を把握したうえで調査対象者を長期間追跡し、将来の疾患発症との関連を調べます。
詳細は、以下のとおりです。
【調査対象者】
イギリスの巨大なバイオメディカルデータベース「UKバイオバンク」を基に、399,586名(平均年齢:56歳、女性比率:55%)が選ばれました。
対象は、調査開始時点で心血管疾患やがん、妊娠中でない成人です。
追跡期間は約12年間で、野菜の摂取量とその後の健康状態との関係が詳細に解析されました。
【野菜の摂取調査】
調査開始時に質問票を用いて、それぞれを「1日あたり、平均で山盛り大さじ何杯分食べているか」を自己申告で回答。
- 生野菜(サラダなど)
- 調理済み野菜(加熱した野菜、じゃがいもを除く)
【評価項目】
評価項目は、心血管疾患の発症および死亡、心筋梗塞や脳卒中の発症、そして全死亡率です。
【統計分析】
年齢や性別だけではなく、喫煙、飲酒、身体活動量、BMI、糖尿病の有無など、多くの生活習慣・健康要因を考慮したデータ調整が行われました。

40万人を12年間追跡! UKバイオバンクの大規模調査
約40万人のデータを詳細に分析したところ、明らかになったのは、野菜を多く食べる人たちのライフスタイルの傾向です。
合計の野菜摂取量が多いグループ(1日8杯以上)は、摂取量が少ないグループ(1日1杯以下)に比べて、以下のような特徴がありました。
- 女性の割合が高い
- 教育水準・社会経済的地位が高い
- BMIが低い
- 非喫煙者が多く、身体活動量が高い
また、生野菜と調理済み野菜の摂取量の相関は、低いことがわかりました(ピアソン相関係数= 0.30。この数値が0に近いほど、二つの間に関係がないことを示します)。
生野菜を多く食べる人が、必ずしも同じ量の調理済み野菜を食べているわけではないことが推察されます。
「生野菜でリスク低下、調理済み野菜では差なし」その理由は?
約12年間の追跡調査データから、生野菜の摂取量が多いほど、心血管疾患の発症リスクや死亡リスクが低いことがわかりました。
一方で、調理済み野菜の摂取量と心血管疾患リスクとの間には、明確な関連は認められませんでした。
この結果だけを見ると、「野菜は生で食べた方がよい」という結論に引き寄せられそうになります。
しかし、なぜ「生野菜」と「調理済み野菜」で差が出たのでしょうか。
研究者たちは、生野菜と調理済み野菜で結果が異なった理由として、3つの可能性を挙げています。
①食べている野菜の種類の違い
生で食べられる野菜と、加熱調理されやすい野菜では、含まれる栄養素の組成が異なります。
②調理による栄養素の変化
加熱によって吸収率が高まる栄養素がある一方で、失われやすい成分もあります。
③調理過程で加わる油や塩分の影響
野菜そのものではなく、調味や調理法が心血管疾患リスクに影響している可能性もあります。

まとめ:「野菜の効果」か「ライフスタイルの効果」か
この研究で特に重要なのは、結果をどう解釈するかという点です。
生野菜を多く食べていた人たちは、もともと、運動習慣があり喫煙率が低く社会経済的にも恵まれており、全体として健康的なライフスタイルを送っている傾向がありました。
生野菜摂取と心血管疾患リスク低下との関連は、「野菜そのものの効果」だけでなく、「健康的な生活習慣全体」の影響を反映している可能性があります。
ライフスタイルの影響を除外し、野菜摂取による心血管疾患リスクを純粋に把握するには、さらなる研究が必要です。
多様な野菜を無理なく取り入れ、健康的な生活習慣を積み重ねていくことこそが、心血管疾患予防に向けた現実的なアプローチなのかもしれません。
出典)Qi Feng et al., Raw and Cooked Vegetable Consumption and Risk of Cardiovascular Disease: A Study of 400,000 Adults in UK Biobank, Front Nutr, 2022, 9:831470
10.3389/fnut.2022.831470