温室での野菜栽培における栄養素の残留レベルと適切な化学肥料の使用量について
野菜を栽培するには、大量の肥料が必要です。
野菜の種類によっても異なりますが、窒素、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれた肥料を成長に必要な量以上施肥しないと、野菜は十分に育ってくれません。
畑に大量に施肥される肥料ですが、すべて野菜の生育に利用されるわけではなく土の中にそのまま残ったり、雨によって流出したり、大気中に放出されたりします。
日本ではそれほど問題化していませんが、流出した土が多くの養分を含んでいるため、湖沼の富栄養化が進んだり、大気中に放出された窒素化合物が二酸化炭素よりも強い温室効果作用を示したり、大気汚染の原因になることもあります。
そのため、環境汚染に配慮しながら、収量を減らさず野菜の栽培を行うことが求められます。
この記事で紹介する文献は、土壌中の栄養素の状態と肥料施肥量が、野菜の収量にどの程度の影響を与えるかを調べた研究です。
この研究は、中国のある地域のビニールハウス野菜圃場における肥料の残留栄養素と肥料施肥量及び野菜の収量の関係を調査したものです。
研究の目的は、以下のとおりです。
- 異なる残留栄養素レベルにおける減肥に対する野菜の収量の応答を明らかにすること
- 肥料を削減しても野菜の収量が減少しない限界残留栄養素レベルを決定すること
- 影響を与えるメカニズムを明らかにすること
研究は9つの圃場で実施され、残留栄養素を事前に調べて施肥量を決定し、この地域でよく食されているステムレタスを4作栽培して収量を調査しました。
残留栄養素は土壌をサンプリングして、全窒素、硝酸塩、リン、カリウム、pH、電気伝導率などを測定しました。
残留栄養素の影響下では、土壌硝酸塩、リン、カリウムが173.3、40.3、および93.1 mg kg -1 以上の場合、ステムレタスの収量を損失することなく施肥量を減らすことが可能でした。
それぞれ、以前の施肥による残留栄養分であり、この地域での肥料削減の指針となる可能性があります。減肥下では土壌硝酸塩が野菜の収量に最も大きな影響を与える主な要因でした。
メカニズムとしては、野菜が化学肥料以外から吸収する窒素は、主に土壌硝酸塩からであるためで、化学肥料から吸収される窒素の生産性とは負の相関が認められました。
また、土壌電気伝導率を測定して硝酸塩含有量を推定することができ、土壌中の残留硝酸塩がさまざまなケースでも、収量を損なうことなく窒素肥料を削減できる可能性があります。
この研究から言えることは、温室野菜栽培における肥料の削減は、土壌中の栄養素の残留レベルに基づいて行うべきであり、それが農業の持続可能性と環境の安全性にとって役に立つことを示すものと考えられます。
Nannan Zhou et al.,Reducing Chemical Fertilizer Application in Greenhouse Vegetable Cultivation under Different Residual Levels of Nutrient, Agriculture 2023, 13(6), 1174; DOI:https://doi.org/10.3390/agriculture13061174