包装技術で野菜や果物の鮮度を守る!?「スマートパッケージング」
スーパーで売られているお菓子や和菓子の袋の中に、小さな「脱酸素剤」が入っているのを見たことがありますか?
「脱酸素剤」は、袋の中の酸素を吸収し、カビの発生や食品の酸化を防ぐ優れものです!
目には見えない働きですが、食品の鮮度を保ち、私たちが美味しさを長く楽しめるのは、こうした技術のおかげです。
このように、食品の品質を高めてフードロスを減らすための包装技術を「スマートパッケージング」と呼びます。
こちらの記事では、野菜や果物に使われている「スマートパッケージング」をご紹介します。
スマートパッケージングの種類と仕組み
スマートパッケージングは、大きく「アクティブパッケージング」と「インテリジェントパッケージング」の二種類に分けられます。
- アクティブパッケージング
包装材にガス吸収剤や放出剤を組み込んで、袋内の酸素・二酸化炭素・湿気などを適切に調整します。
この働きが微生物の増殖や酸化を抑え、保存期間を延ばして品質を保ちます。
よく見かける脱酸素剤や乾燥剤が、これにあたります。
- インテリジェントパッケージング
センサーやQRコードを組み込んで、鮮度・品質・生産から流通の追跡などを可視化する仕組みです。
鮮度が落ちると色が変わるフィルムや、電子ラベルで生産日・輸送記録を追えるシステムなどがあります。
野菜や果物の保存への応用
スマートパッケージング技術は、野菜や果物を保存する上で、さまざまな方法で応用されています。
- 温度・湿度インテリジェントパッケージング
包装内の温度と湿度を監視・調整することで、野菜がしなびたり腐敗したりするのを防ぎます。
例えば、マッシュルームの包装では、湿度調整によって、野菜や果物の成熟や老化を引き起こすエチレンガスの働きを抑える“1-MCP(1-メチルシクロプロペン)”というガスの放出速度をコントロールできるフィルムが開発され、エチレン濃度を下げることで軟化・褐変・重量減少を遅らせた事例があります。 - 抗菌鮮度保持パッケージング
銀イオンやナノマテリアルなどの抗菌技術で、バクテリアやカビの増殖を抑制して保存期間を延ばします。
特に、いちご・ブドウ・サクランボといった、傷みやすい果物で効果が期待されます。
- 生分解性アクティブパッケージング
ポリ乳酸(PLA)などの生分解性材料を使うことで、プラスチック汚染の課題に配慮しつつ鮮度保持に貢献します。
お茶や大豆の残渣を活用して生分解性フィルムを作り、いちごやラズベリーの鮮度を延長した事例も報告されています。 - ナノコーティング・ナノ粒子
ナノコーティングとは、果物や野菜の表面にごく薄い保護層を作り、ガスの通り道を調整して呼吸を抑えることで腐敗の始まりを遅らせる技術です。
さらに、ナノシルバーなどのナノ粒子を抗菌剤として使い、微生物の増殖を防ぎます。
スマートパッケージングのメリットとデメリット
スマートパッケージングの導入には、食料システム全体への大きな利点がある一方で、普及への課題も残っています。
◆メリット
・鮮度期間の延長とフードロスの削減
・リアルタイム監視とフィードバックの実行
・食品安全性の向上
・環境保護と持続可能な開発への貢献
◆デメリット
・コストが高い
・新素材の安全性や毒性への懸念
・温度・湿度・光など外部環境変動が、スマートパッケージングの性能に与える不確実性

日本でもカット野菜やカットフルーツの普及が進み、より傷みやすい状態での品質管理が重要になっています。
そこで、スマートパッケージングは不可欠な技術として発展していくはずです。
包装技術とIoTの融合が進み、コストや安全性、環境への影響といった課題が解決されれば、よりサステナブルな社会づくりにもつながると期待されています。
【引用文献】
Liuzi Du et al., Application of Smart Packaging in Fruit and Vegetable Preservation: A Review, Foods 2025, 14(3), 447.
https://doi.org/10.3390/foods14030447
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