野菜摂取と食道がん発症リスク低下について
食道がんは、女性よりも男性の罹患者が多いがんです。
日本人の食道がんの大半を占める扁平上皮がんは飲酒・喫煙との関連が非常に強いため、男性の罹患者が多くなっています。
この研究は、1995年と1998年に日本の沖縄~東北地方の9つの地域に住む、当時45~74歳の男性約39,000人を対象にアンケート調査を実施し、その後2004年まで追跡調査して、野菜・果物摂取量と食道がん発症の関係について調べたものです。
追跡期間中に、116人が食道がん(扁平上皮がん)と診断されました。
食事に関するアンケート調査の結果から、野菜・果物の1日当たりの摂取量を推定し、高・中・低摂取の3グループに分け、食道がんのリスクを比較しました。
その結果、野菜・果物の摂取量が増えると、食道がんのリスクが低下する傾向にありました(統計的有意差あり)。
特に高摂取グループでは、低摂取グループに比べ、食道がんのリスクがほぼ半減していました。
さらに細かく見てみると、摂取量が1日当たり100グラム増加すると、食道がんのリスクが約10%低下していました。
野菜・果物を種類別に見てみると、キャベツ・大根・小松菜などが含まれるアブラナ科の野菜でのみ統計学的に有意な低下がみられました。
アブラナ科の野菜は、発がん抑制作用が実験的に確認されているイソチオシアネートを多く含んでいます。
さらに、食道がんの原因と考えられている飲酒・喫煙者で調査した所、野菜・果物摂取量が増えると、喫煙・飲酒による食道がんのリスクを低下させることが明らかになりました。
特に喫煙あり・1日飲酒量2合以上(日本酒換算)の食道がんリスクの高いグループでは、摂取量が1日当たり100グラム増加すると、食道がんリスクが約20%低下していました。
以上、野菜・果物の摂取量が増加すると、食道がんの発症リスクを抑制する効果が確認されました。
しかし、野菜・果物摂取によるこれらの効果は、禁煙・減酒による予防効果ほど強くはありませんでした。
したがって、食道がんの予防には、まず禁煙・禁酒、次に野菜・果物摂取が大切であると言えます。
【出典】
Taiki Yamaji et al.,Fruit and vegetable consumption and squamous cell carcinoma of the esophagus in Japan: The JPHC study,International Journal of Cancer,2008,Volume123, Issue8,Pages 1935-1940