肥満を対象とした不健康な食品への課税と健康的な食品への補助金の影響調査
健康のために食品の購入を考える場合には、2つの選択基準があります。
それは、不健康な食品を買わないか、健康的な食品を買うか、ということです。
嗜好的に不健康な食品が嫌いで、健康的な食品が好きな人は悩むことはありませんが、逆のケースも多いと思われるので、とても悩ましい選択になりますね。
そのような場合の動機付けとなる制度として、海外では、不健康(と考えられる)食品に対する課税制度と健康的な食品に対する補助制度があります。
例えば、ハンガリーでは、塩分や糖分の高い食品に課税する制度がありました。(通称「ポテトチップス税(ポテチ税)」)
また、デンマークでは、2.3%以上の飽和脂肪酸を含むバターや乳製品、肉類などの食品を対象に課税する「脂肪税」が導入されていました。
ただし、この2つの制度は、消費者が隣国で食品を買うようになり、既に廃止されています。
他にも、米国では、糖の多い飲料に税金をかける「ソーダ税」というものがあります。
では、これらの制度は、消費者の行動と健康にどのような影響を与え、効果はあったのでしょうか?
今回紹介するのは、肥満者に対してこれらの制度が与える影響を検証した興味深い内容です。
食品は必需品であり、ほとんどの人は体重の状況に関係なく、栄養科学によって健康的であると考えられる食品と、健康的ではない、または不健康であると考えられる食品の両方を摂取しています。
したがって、肥満の対策については、経済的利益と費用の実効性の検証、及び肥満と非肥満、低所得者と高所得者にどのように配分されるか検討することが重要です。
この研究では、米国における食品購入および取得調査 (FoodAPS)と世帯員の肥満状態のデータに基づいて、不健康な食品への課税と健康的な食品への補助の影響を調査しました。その結果、
- 加糖飲料税は、低所得の肥満消費者が購入する商品の健康度を高めるのに効果的であることが判明した。
- 果物と野菜への補助金による栄養上の影響は非肥満の消費者に集中しており、肥満の消費者の健康的な食事指数はほとんど改善されなかった。
- 健康食品補助金は、肥満の消費者よりも非肥満の消費者の方が経済的にも栄養的にも効果的であった。
これらの調査結果は、不健康な食品の価格を上げずに健康的な食品の価格を下げても、肥満を減らす可能性は低いことを示しています。
Chen Zhen et al.,Do obese and nonobese consumers respond differently to price changes? Implications of preference heterogeneity for obesity-oriented food taxes and subsidies, American Journal of Agricultural Economics, Article,Accepted: 31 May 2023