学術情報

野菜や果物の摂取が睡眠の質の低下を抑える?観察研究からの予測

この記事をシェアする

「野菜は健康に良い」というイメージをお持ちの方が多いと思いますが、それはどのような効果によるのでしょうか?

野菜がもたらす「健康」というと、血糖値や血圧が上がるのを抑えたり、お通じを良くしたりする効果が思い浮かびます。

実は、最近の研究では、野菜にはこれまであまり知られていなかった、私たちの睡眠をサポートするという新しい価値があることが示されました!

こちらの記事では、野菜が私たちの睡眠に与える効果について調べた研究をご紹介します。

研究の概要

普段の睡眠時間は7〜9時間で、睡眠に関する病気はない健康な大人34人(男性28人、女性6人)が研究に参加しました。

調査方法は、次の通りです。

  • 食べたものは、米国の調査ツール「Automated Self-Administered 24-Hour Dietary Assessment Tool(※1)」で記録しました。
  • 睡眠は手首につける「アクチグラフ」で測り、それに加えて本人の日記(睡眠日誌)も使いました。
  • 主要な指標は「睡眠断片化指数(SFI)」です。睡眠がどれだけ細切れになっているかを表す数値で、数値が低いほど睡眠の質が良いことを意味します

(※1)Automated Self-Administered 24-Hour Dietary Assessment Tool は、ウェブベースの自動化された食事調査システムです。回答者自身が、過去24時間に食べた飲食物をオンラインで入力すると、システムが自動で栄養素や食品群の摂取量を計算・分析します。

主な分析結果

調査・分析の結果、次のようなことがわかりました。

  • フルーツと野菜を多く食べるほどSFIが低くなった。(p=0.038)
  • 炭水化物をたくさんとるほどSFIが低下した。(p=0.022)
  • 食物繊維を多くとるほどSFIが低くなる傾向があった。(p=0.083)
  • 赤身肉や加工肉を多くとる人はSFIが高くなる傾向があった。(p=0.098)

これらの結果から、フルーツや野菜をよく食べることが、その夜の睡眠の質を良くする可能性が示されました。

この効果は、野菜や果物に含まれる「炭水化物」や「食物繊維」によるものだと考えられます。

一方で、赤身肉や加工肉に多く含まれる「飽和脂肪酸」は、睡眠の質を下げる可能性があるとわかりました。

野菜が睡眠の質を改善するメカニズム

野菜が睡眠の質を改善するメカニズムとしては、次の3つが考えられます。

1つ目としては、「炭水化物」が「トリプトファン」の脳への取り込みを助けている可能性があります。
トリプトファンは必須アミノ酸で、体内で「セロトニン」を経て、睡眠を促すホルモン「メラトニン」に変わります。
炭水化物の摂取によりトリプトファンが脳に入りやすくなり、結果的に睡眠の質が向上することが考えられます。

2つ目に、植物に含まれる成分「ポリフェノール」の摂取が睡眠と関連するという報告もあり、抗酸化や神経伝達に影響する可能性があります。

3つ目に、高タンパク質の食事はトリプトファンの脳内取り込みを阻害し、メラトニン合成が起こりにくくなることです。こちらは、高齢者や妊婦を対象に「睡眠の質悪化」が報告された例があります。

この研究の特徴は、同じ日の「食べたもの」と「その夜の睡眠」をペアで集めて比較している点です。
これは、「その日の食事とその夜の睡眠の関係」を調べるために役立ちます。ただし、あくまでも観察研究であり「関連を示す」ものです。
そのため、「野菜を食べたから睡眠がよくなった」と断言することはできません

「野菜を食べるから睡眠の質が良くなる」と断定するためには、介入試験やメカニズムの解明など、さらなる科学的検証が必要となります。

研究結果からは、日々の食生活が、私たちの夜の睡眠に直接影響を与える可能性を示しています。
睡眠の質が良くなれば、気分が晴れやかになり、一日を快適に過ごすことができますよね。

野菜や果物は、身体の健康だけではなく、こころの健康も守ってくれる食べ物なのかもしれません!

【引用文献】
Hedda L. Boege MS et al., Higher daytime intake of fruits and vegetables predicts less disrupted nighttime sleep in younger adults, Sleep Health, 2025, 11(5), 590-596
https://doi.org/10.1016/j.sleh.2025.05.003

公式SNS
フォローしてね

このサイトをシェアする